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落ちこぼれ魔導師が学園で何かを始めるようです!  作者: とら猫の尻尾
第1章 落ちこぼれ魔導師、普通の高校へ行く
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第3話 ムラサキ色の獲物

第3話 ムラサキ色の獲物【主人公視点】


 4時間目終了のチャイムが鳴った。


 ここ学校法人芝桜学園高等学校には立派な学生食堂があるけれど、上級生が優先という暗黙の了解がある。そのため、僕たち1年生は弁当か購買部で買うパンを教室で食べる者がほとんどだ。


 実のところ僕にも教室で昼食を一緒に食べる仲間ぐらいはいる。友達はいないが仲間ぐらいはいるのだ。ああ、ちょっと落ち込んできた…… 暫く待っててくれ……


 最近はこの学園の由来である芝桜が植えてある中庭をぶらぶら歩いて時間を潰す日々が続いている。毎日母親から支給される昼食代500円をクレーンゲーム代に流用するためだ。どうしても空腹で我慢できないときだけは菓子パン1個を買い、あとは水を飲んでごまかしている。


 午後の授業が終わると、夕方近くまで図書室で時間をつぶし、そして4時30分に下校する。学園近くの駅までは徒歩15分。その駅前に大型ショッピングセンターがある。


 1階のペットショップや書店をぶらぶら歩いてから、5時の時報とともに2階へ上がる。2階のゲームセンターでは、いつものようにゴシック&ロリータファッションの少女が僕を出迎えてくれる。


「今日の軍資金は500円だよ!」


 100円玉を5枚乗せた手のひらを見せると、少女から『ゴクリ』とつばを飲み込む音が聞こえたけれど、僕の気のせいかも知れない。


 少女が指を指すクレーンゲーム機の中を観察する。連日のチャレンジによって僕の技術力も相当上がっている。


「まず、奥のゴリラをゲットして、次にその右隣のコアラを捕る。その順番でいい?」


 少女が僕の目線に合わせるように顔を近づけて見ようとするので、ドキッとする。


 ああ、幸せのフローラルブーケの香りがする。


 ここ数日のうちに、幾度かこのような幸せの瞬間に巡り会えている僕は、鼻の穴を膨らませることなく自然体でこの幸せをかみしめることができるまでに成長している。


 勇気を出して、ちらっと少女の横顔をみると……


 すらっと伸びた長いまつげの下に、黒い瞳が見えた。


 あれ? 今日はカラーコンタクトをつけていないのか。


 自然体の、そのお目々も素敵です。


 くちびるは、カラーリップを塗っているのだろうか。


 薄いピンク色に、ラメが入ってきらきらしている。


 柔らかいんだろうなぁ、半開きのくちびるに吸い寄せられそう…… 


「お願いします」


「えっ、ええっ…… なにを?」


 少女はキョトンとした表情で僕を見た。


「なにって…… ゴリラさんとコアラさんの順番でお願いします」


「ああ、クレーンゲームの話……」


「それ以外に何かあります?」


 僕は胸に手を当てて、動悸が収まるのを待つことにした。


 それを少女は不思議そうに眺めていた。


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