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落ちこぼれ魔導師が学園で何かを始めるようです!  作者: とら猫の尻尾
第2章 落ちこぼれ魔導師、同好会をつくる
59/60

第18話-10

「袖口が破れてしまったぁ-、どうしよう?」


 僕らが駆けつけると、先生は涙目でそう言った。


「あらら、やっちゃいましたね…… 見事に縫い目の部分が裂けちゃっていますよ。なんでこうなっちゃったんですか?」

「和服なんて着慣れないからさ、グイッと引っ張ったらこの通り…… どうしよう?」

「どうしようと言われても…… どうしようもないんじゃないですか?」


 僕は呆れ気味にそう言い放した。


「もう、先生は力任せに着ようとするから…… ほら、脱いで! お祖母さんが直してくれますから」

「えっ、本当に? お祖母ちゃん直してくれるって?」

「どうやって直すんだ? エレナ、お前がやるのか?」

「私はできません! ほら、そのためにミシンがあるんだから」

 エレナは足踏みミシンを指さして言った。 





「桂木…… 先生は今猛烈に感動しているぞ!」

「言わなくても分かりますよ先生…… せめて鼻水はティッシュで拭いてください」


 僕が差し出したティッシュで鼻をかむ小林先生。

 先生が見つめる先には、甲斐甲斐しく手伝うエレナと…… 足踏みミシンを器用に扱うお祖母さんの姿があった。

 もちろん先生には見えていない。しかし、足踏みミシンと着物の動きからお祖母さんが確かにそこに居ることが視えているのだろう。


「コバやん先生、仕上がりましたよ。着てみて!」


 エレナに促されて先生は着物に袖を通す。


「ど、どうかな? 似合っているかな……」


 照れくさそうに頭をぼりぼり掻きながら先生が言う。

 先生には聞こえていないが、お祖母さんが『とても似合っているわ』と喜ぶ。


「……えっ? 今なんて言った?」

  

 先生は僕とエレナの顔を交互に見てきた。


「……僕たちは何も言っていませんが?」

「そ、そうか…… 空耳かな…… ははっ……」


 先生は再び頭をぼりぼり掻いた。


「そうだ、先生。記念に写真を撮っておきましょう! エレナとお祖母さんも一緒に入って!」


 僕はスマートフォンを取り出し、構える。

 お祖母さんは先生の肩にそっと手を当て、すぐそばに立つ。

 エレナはその反対側に立ち、ニッコリ笑顔を作った。


「先生、表情が硬いです。もっと笑ってくださいよ!」

「あっ、ああ、そうだな。笑わなければな…… 写真だものな……」


 僕はスマートフォンの画面を見ながら、先生に笑顔を催促する。

 写真ならば…… カメラのレンズを通してなら……

 もしかしたらお祖母さんの姿が写せるのではないかと思ったんだ。

 でも…… 画面にはお祖母さんの姿は…… なかった……


「悟さんも笑顔ですよ!」


 エレナが笑顔で僕に声をかけてきた。

 君だって目から涙がこぼれているじゃないか。


「じゃあ、写しますよ。はいっ、チーズ!」


 シャッターを押した瞬間に奇跡が起きるかも知れない。

 そんな一縷の望みをかけて僕はスマホのボタンを押す。


 


「なあ、あの写真のデータ、先生の携帯にメールで送ってくれよ」

 小林先生は駅までの道すがら、そんなことを言ってきた。

「生徒に携帯のメールアドレス教えちゃっていいんですか?」

「ああ、構わないよ。だって先生はキミたちの担任なんだから。それに、部活動の顧問になったら何かと連絡が必要だろ?」

「コバやん先生、占い同好会の顧問になってくれるの?」

「サッカー部との掛け持ちになるけどね…… 約束は守るよ!」

「ありがとーこざいます!」

 僕とエレナは2人そろって頭を下げた。

 小林先生の携帯アドレスに写真データを送信した。


「お、来た来た、ありがとう!」

  

 写真には涙目で笑うエレナと小林先生、そして先生の肩に優しく留まる温かそうな光が写っていた。 


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