第18話-9
「僕は今日…… お祖母ちゃんに謝りに来たんだ……」
「おや、そうなのかい。言ってごらん、政則さん」
「うん、あの…… 成人式のために作ってくれた和装のことなんだけど……」
先生はそこまで言って、お祖母さんと同化したエレナから目を逸らした。
エレナはふと部屋の奥に視線を移して、何かぶつぶつ言い始めた。同化しているお祖母さんと話しているようだ。
「コバやん先生、ちょっと待ってて!」
エレナはお祖母さんとの同化を解いたようだ。そして奥の和室にある押し入れを空ける。中には古びた段ボール箱や衣装ケースが残されている。先生のお祖母さんが亡くなったあとの身辺整理ではこの中までは手が回らなかったのかも知れない。
「あったあった。これね!」
エレナは白い紙に包まれた衣装を僕らのところへ運んできた。
「栗沢さん、これは……?」
「コバやん先生、開いて見てよ!」
「う、うん…… こ、これは!」
包みの中には和装の衣装が大事に保管されていた。
「まだ残っていたのか! わー、懐かしいー! ……なんて言っては怒られちゃうよね。僕は成人式の当日に着なかったのだから。お祖母ちゃんの気持ちを考えずに…… すまない…… ごめんなさい……」
小林先生は衣装を握りしめ、涙をぽろぽろ流して泣いた。
エレナは両膝を付いて、先生の肩にそっと手を乗せ、優しい口調で語る。
「コバやん先生、お祖母さんは怒ってはいません。だって、先生はちゃんとお祖母さんの前で袖を通してニッコリ笑ったんでしょう? 作った甲斐があったって、喜んでいるんですよ。だから大切に保管していたんです。次の機会がくるのを待っていたんですよ」
「えっ…… 次の機会って……」
「さあ、それ以上はニコニコしているだけで言ってくれませんから私には分かりません」
エレナは両手を広げて首をかしげる。
「そうか…… お祖母ちゃん怒っていなかったのか……」
先生はホッとした表情で、着物を広げて懐かしそうに見ている。
「ちょっと着てみようかな」
「それ、いいですね。お祖母さんもきっと喜びます!」
エレナがニコリと笑う。
半裸状態になるという先生の言葉で、エレナは急ぎ足で廊下に退避していく。僕も男の半裸状態を見る趣味はないので、一緒に廊下で待機だ。
数分後――
「しまったぁぁぁぁ!」
先生の叫び声がボロアパートに響き渡った。




