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落ちこぼれ魔導師が学園で何かを始めるようです!  作者: とら猫の尻尾
第2章 落ちこぼれ魔導師、同好会をつくる
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第18話 四号室の足踏みミシン

「ハーブティーのサービスです」

 受付に置いた小さなカフェテーブルに、ガラス製のカップに注いだハーブティーを置く。

「今日のハーブはカモミールとシナモンのブレンドですよ。どちらもリラックス効果があります」

「うわー、うれしい! ありがとう」


 最近、占い同好会(未公認)提供『占いの館』では受付で待っているお客さんにハーブティーのサービスを始めた。これは僕の発案だったのだが、すこぶる評判が良い。ハーブティーを目当てにくる人もいるかも知れないというぐらい、サービス開始からお客さんがうなぎ登りに増えてきたのだ。

 実はもう一つ、お客が増えてきた要因があるのだが……


「佐倉さんありがとう! アドバイスとても参考になったわ」

「良かったです。またぜひ来て下さい」

 占い相談を終えて『占いの間』から出てきた女生徒が、ぺこりと受付の僕にあいさつしてドアから出て行った。

「お待たせしました。『占いの間』へお進みください。」

 僕は営業スマイルで言った。


「次のお客さん入れていいかな?」

 廊下でお客の整理をしている角田修平が顔を出す。

「どうぞ入ってもらって」

 ちらっと廊下を見てみると、今日はまだ4人の待ち客がいるようだ。

「こんにちはー」

 毎週のように来てくれる隣のクラスの松本さんだ。

「今日の担当は佐倉さんなのね。それなら今週の運勢についてお願いしようかしら」

「いつもありがとうございます。500円確かに頂きました」


 そう。この占いの館のシステムを整備して、1回の占いを1コイン、500円で提供するようにしたのだ。

 占い師はエレナと佐倉葵の交代制として、この時間帯は佐倉葵の当番となっている。

 無料で提供していた占いを有料化したことお客さんが減るかと思いきや、意外や意外、逆にお客さんが増えるという現象が起きている。

 ちなみにこのシステムを考えたのも僕だ。

 金額設定は『会計士』の佐倉葵と相談して決めたのだが…… 

 僕には商売の神様がついているんじゃないだろうか。


 そんな自画自賛なことを考えながら松本さんにハーブティーに出そうとカップを手に持ったときに、ひょこっとエレナが廊下から顔を出した。

「コバやん先生が私たちのことを呼んでいるってー。どうする? 聞かなかったことにしておくー?」

「いやー、参ったなー。僕、避けられちゃってる?」

 エレナの背後から小林先生が頭をかきながら言った。

 エレナがバツの悪そうな顔をしたけれど、自業自得だな……


 受付は修平に任せて、僕とエレナは小林先生の話を聞くために奥の『治療室』に案内した。

「ハーブティーです。今日はカモミールとシナモンのブレンドです。リラックス効果がありますよ」

 自分のカップと合わせて3杯のハーブティーを入れて丸いガラステーブルに置いた。

 ちなみにこのテーブルはエレナがアパートで使っていた物だ。

「あっ、見覚えがあると思ったら、これ僕がアパートで使っていたテーブルだ。この辺りのサビの形とか覚えているよ。懐かしいなぁ」

「ええっ?コバやん先生ったら『趣のあるアパート』の12号室の住人だったの?」

「栗沢さんが住んでいたのは12号室だったのか。それは奇遇だねえ。2年前に今のマンションに引っ越すまで僕はそこに住んでいたんだよ。」


 『趣のあるアパート』とは僕の家の居候になるまでエレナがすんでいた『ぼろアパート』の通称だ。そこが小林先生の実家ということで、その言い方が僕らの間では定着していた。


「それで元12号室の住人であるコバやん先生の用件はなに?」

 エレナは冷めた感じで尋ねた。エレナは先生に初めて会ったときに自分のことを『案外普通で……』と言われたことを未だに根に持っているようだ。

 小林先生は『参ったなー』という感じに頭を掻きながら、

「4号室に住んでいたお祖母さんの件なのだけれど……」

「2年前に亡くなられた先生のお祖母さんですね?」

「私しばらく会っていないわ-、お元気かしら?」

 いや、死んでるから元気とかそういう次元の話ではないと思うけど……


 小林先生は神妙な顔つきで座り直し、

「僕にも会わせてくれ! 頼む!」

 と僕たちに向かって頭を下げたのである。


 小林先生の真摯な態度を見て、エレナも自分の態度を改めたようだ。

 彼女は微笑みながら、

「コバやん先生、顔を上げてください。分かりました。不肖この私、栗沢エレナはあなたのために一肌脱ぎましょう。そしてあなたはこう言うでしょう。『お礼と言ってはなんだが、占い同好会の顧問になるよ』と――」

 と何かお告げを授かった宗教関係の人みたいな感じで言った。

 態度は全然改まっていなかったようだ。

「ええー? この部屋を提供しただけでなく、顧問まで頼まれちゃうの? いやー参ったなー。僕はサッカー部の顧問だしなぁ……」

 小林先生は頭をボリボリ掻きながら本当に困っていた。


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