第17話 使い魔の契約
「バット、そこに座わりなさい」
私は私の使い魔に命令した。
「はあ?」
私の命令は一蹴された。
ここは悟さんの部屋の隣、お父様の書斎を間借りした私の部屋。
私が運営する会社に『会計士』が加わって今日は気分が良い。
けれど、どうしても確かめておかなくちゃいけないことがあるの。
「じゃあ座らなくていいから質問に答えて。私はあなたと使い魔の契約を結んでいる。そうよね?」
「C契約を結んだよね、何をいまさら?」
「契約を結んだから私とバットは同化して、魔力を共有できるようになった。そうよね?」
「その通りだね」
「じゃあ今日のは何なの?」
「エレナ…… 人間君に嫉妬しちゃった?」
「はあ? な、なに言っちゃってるの……」
「図星かぁ……うぐっ!」
私はムラサキ色のコウモリのぬいぐるみを締め上げた。すると……
『ズボボボ…… ピョーン』
バットはぬいぐるみの体を自らねじり上げ、瞬間的にもとに戻す振動で私の締め上げから逃れた。そんな気持ち悪い技を…… いつの間に習得しちゃったの?
若干引き気味の私にお構いなしにバットは机の上にちょこんと着地する。
「使い魔の契約は、それが必要となったときに最優先に協力しますっていう約束みたいなものなんだ。だから同化するための必須条件ではないんだよ」
「じゃあ、今日はどうして私を最優先にしてくれなかっ…… あっ!」
「気付いた? 私利私欲のために魔力を使っちゃいけないよね」
「あはははは…… いつもお世話になっています! あ、そう言えばこの間はあなたのガードのお陰でサキュバスに記憶を抜かれずにすんだわ、ありがとう!」
「えっ? そんなガートは掛けていないけれど……」
「だって…… サキュバスが本気になっちゃって、私の記憶を消し去ってやるーって息巻いていたけれど、あなたのガードのお陰で命拾いしたって……」
「それはありえないよエレナ。サキュバスが本気になったら人間の記憶なんて1秒もかからず一瞬で喰い尽くされちゃうよ?」
「そ、そうなの……?」
私は今更ながら、あの夜の出来事に戦々恐々となった。
あの夜、悟さんのお母様は自らの意志で私を許してくれたということだろうか。
明日の朝一番にお礼を言わなくちゃ……
「ところで悟さんと同化して、何話していたの?」
「特に何も…… 人間君は部屋の隅っこが落ち着くってさ。そのぐらいかな。後は寝ていた」
「そ、そう…… ねえ、バットはどんな相手でもああやって同化できちゃうものなの? たとえば悟さんのお母様とか……」
「はあ? サキュバスかよ。まあ、できないことはないぞ。後が怖いからやらないし、やることはないだろうが。天地がひっくり返っても、あいつと同化する日なんて来るわけがないじゃないか、ははははは……」
私の使い魔はぬいぐるみの体でこれ以上ないぐらいふんぞり返って、これでもかーというぐらいにフラグを立てていた。




