第16話-2
抱きしめ合う『プレイ』に飽きたらしく、神林先輩は赤縁メガネをくいっと持ち上げていつもの平静な表情に戻した。
「ところで何かお礼をしたいと考えているのだが、生徒会副会長という私の立場から金銭や物品をという訳にはいかないのだ」
と言うので僕は答える。
「いえいえ、そもそもお金なんて先輩から頂くつもりはありませんから…… ってエレナあからさまにがっかりした顔するなよ。さっきまでのテンションはどうしたんだ?」
「ぶー!」
「……。お、お金が良いのだったらそれでも私は……」
エレナの表情がぱっと明るくなる。
「先輩、エレナを甘やかさないでください。そもそも同好会の活動でお金を取るなんておかしいじゃないですか。しかも栗沢さんったら『占いの館』という会社まで設立して儲けようと企んでいるんですよ」
「う、裏切り者ー!」
僕は財団法人魔術開発グループのアドベンチャー企業として立ち上げたという会社のことを本人を前にして堂々とチクった。エレナには激しく睨まれてしまったが、ここはハッキリとしておかなければ…… 心を鬼にしてダメなものはダメと……
「別にいいんじゃないかニャー」
「ええ? いーんですか?」
「この芝桜学園高校には社会参加活動の一環として同様の取り組みをしている同好会グループはいくつかあるのだ。我が校に商業科クラスがあるだろう。最低でも1名は商業科クラスの生徒がメンバーに入っていなければならないが、その条件をクリアし、なおかつ学校長の許可も得られれば……」
そうか! エレナは事前にそのことを知っていて会社をつく――
いや違うな……
ものすごくホッとした感じのエレナの顔を見てそう確信した。
「でも、学校長の許可ということは、またハードルが上がりますね」
僕がそう不安を漏らしたら、神林先輩が、
「大丈夫この私がいる。栗沢エレナの素晴らしい力を大いに発揮してもらうためにも私も協力しよう。生徒会執行部の仕事と掛け持ちにはなるが仲間に入れてもらえるだろうか?」
「お姉ちゃーん! ありがとうー」
「お、おおー!」
エレナと神林先輩は再び抱き合った。
「桂木君、しばらくは苦労しそうだニャー。神ちゃんのことよろしくニャ」
「はい、頑張ります……」
大胆さというか無計画性というか、そういう所もエレナの魅力の一つなんだよな。
こうして、同好会に新しいメンバーが1人加わった。
同好会承認の条件まであとメンバー1人、顧問1人となった。




