第14話-4
「あなたたち、生徒会執行部の許可も得ず何をやっているの?」
赤縁眼鏡の生徒会副会長、神林先輩がお怒りのようです。
「私たち趣味で占いの館を経営、もとい運営しているだけですけどなにか?」
エレナもなぜか神林先輩に食ってかかっている。
「たとえ趣味だとしても、学園内でこのような勝手な活動は許すわけにはいかないわよ!」
「それにしてもよく作ったね-君たち。あっ水晶玉だニャ-、これ本物かニャ?」
「本物ですよ巻田先輩! 触ってみます?」
エレナが和やかに対応する。
「えっ、いいの? 初めて触るニャー」
「よかったら占ってみましょうか? 先輩!」
「えーいいの? じゃーね、じゃーね、何について占ってもらおうかニャー……」
そう言ってエレナと巻田先輩は『占いの間』に入っていった。
残された神林先輩は小さくため息をついて、僕を見る。
やはりきれいな人だ……
赤縁眼鏡の瞳に吸い込まれそうなぐらいに眼光が鋭い。
エレナの可愛らしさに対して、この人は『美人な人』という表現しか思い当たらない。
そんなことを考えていると、神林先輩が僕の腕を引っ張り、
「ちょっとあなたこっちへ来なさい」
と『占いの間』の奥につくられた『治療室』に連れて行かれた。
「あなたがいながら、どうしてこうなったの?」
部屋の真ん中に置かれた人体模型を挟むように神林先輩と僕は話している。
「いやぁ、同好会の件で先輩に相談したあと、怒濤のごとく物事が進んでいきまして…… ところで先輩! 僕のこと知っていたんですか?」
「もちろん知っていた。私は目立つ生徒の情報は何でも知っているの」
「目立つ生徒…… 僕は目立っていました?」
「目立つわよ。いつも教室の隅っこで隠れるようにしていたり、体育館では体育倉庫に隠れていたり、お昼休みは誰もいない中庭を独りでふらふら歩いていたり…… あなた、自分が目立たないとでも思っていたの?」
ガーン!
そうだったのか……
『木の葉を隠すなら森の中』ということわざを思い出した。
「……それで、先輩はそんな僕に何を期待しているのです?」
「あなたのような、社会から隔離させた世界を望み、空想の世界で独り生きようとする人は慎重に物事を判断する能力に長けているの。こんなことやったら怒られないかなーとか、目立つことをやったらしかられちゃうーとか、そんな気の弱さは集団の中では役に立つことがあるのよ! 自分は社会の隅っこで暮らしていきますから放っておいてくださいみたいに教室の隅でいじいじしている人は、物事をびくびくしながら慎重に進めたり戻ったりするはずでしょう?」
神林先輩は、人体模型の頭を『パン』と叩いた。
「先輩それ首が外れるので気をつけてください」
「あ、ごめんなさい」
僕は涙目で人体模型の首をぐりぐり填めている。
涙が出てくるのはそれが壊されたからではないことは明白だ。
そう…… 僕は今猛烈に感動している。
社会の隅っこで暮らしていこうと決意した僕にも長所があった。
先輩はそれを認めてくれている。
こんなにうれしいことはない!
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、
「でも、今のあなたは俗世に染まった一般人……」
そう宣告されてしまった。
ガーン!
「それどころかもう騒動の渦中にいるじゃないの。『片隅で目立つ人』から『騒ぎの中心で目立つ人』だなんて、一足飛びに変わり過ぎじゃない?」
僕はひざから崩れ落ちる。
今の僕にはエレナに出会う以前の16年間が、とてもいとおしいものに感じられるようになっていた。




