第13話 サキュバスの本気
悟さんの家に帰りついた頃には、夜の10時を過ぎていた。
私は今日、義父の養成学校の理事長と夕食を食べながら今後のことついて色々と話し合った。学業に関する費用と、居候させていただく悟さんのご両親に『家賃』としてのお礼金を、今まで通り理事長が援助してくれることに変わりはない。
しかし、お小遣いの仕送りはお断りした。養成学校高等部どころか、一般の高等学校への進学もしなかった私が、これ以上義父に甘えるわけにはいかない。一度は社会に出ると言い張ってしまったことへの私なりのけじめなのだ。
あともう一つの用事も済ませてきた。財団本部に提出する書類を預けてきたのだ。今日の夕食会も、どちらかと言えばそちらが本命だったの。
私はもう寝ているかもしれない悟さんたちに気を遣って、そっと玄関のドアを開けた。すると玄関には悟さんのお母様と、その肩に乗ったバットが立っていた。
「こんな時間までふらついているなんて、とんだ不良泥棒猫ね!」
「エレナぁ-、遅くなるなら電話ぐらいよこせよ。サキュバスがさっきから熊みたいにうろうろして落ち着―― うぐっ」
悟さんのお母様はムラサキ色のぬいぐるみを締め上げている。
私を心配して待っていてくれたのかしら?
「心配かけてごめんなさい。義父と会っていました」
「あっそう…… べ、べつにあなたのことなんで心配していたわけじゃないんだからね! あ、夕飯は食べたの?」
「はい、『父』と食事してきました」
「そう、それじゃ、シャワーを浴びてきなさい。そしたらいつもの…… ね」
お母様は私の耳元でささやいた。
「はい、そうさせてもらいます」
私はこくりとうなずく。
バットを先に部屋へ行かせて私はシャワーを浴びた。熱いシャワーを浴びていると、一日の疲れも洗い流せる。
悟さんは、家に帰るなり、パタンと寝てしまったらしい。部室の掃除をがんばってくれたんだね。ありがとう! 明日の朝一番でお礼を言おう。
私はパジャマに着替えると、悟さんのお母様の部屋へ向かった。
私は部屋のドアをノックする。
「お入りなさい」
中から悟さんのお母様の返事がする。
「失礼します」
お母様はネグリジェを着て、私を迎え入れた。
ムラサキ色のカーテンに、ムラサキ色とピンクのストレイプの壁紙。
カーペットは濃い紫色と黒系の斑模様。
悪魔の人たちって、ムラサキ色が好きなのね。
「ここにお座りなさい」
お母様の指示に従い、私はベッドに座る。
『ふふっ』という感じの濃艶な笑みを浮かべながら、お母様は化粧台の椅子を引き寄せ、私の間近に座った。
さ、さすがサキュバス。同性の私ですらドキドキしてきたわ。
「では始めましょうか」
お母様は私の耳元でそうささやいた。
「はい……」
私は静かに目を閉じた――




