第12話-2
「同好会やろう!」
エレナの高校デビューから1ヶ月が過ぎ、関東地方に梅雨入り宣言が発表された日、突然そんなことを言い出した。
「僕たち、もう『帰宅部』に入っているだろう」
「そんなのつまんないよー。ただ帰るだけじゃないの」
「それが帰宅部だろ」
「だってだってぇ、悟さんと一緒に図書室に寄ってぇー、ショッピングモールをぶらぶら歩いてぇー、クレープを買い食いしたりぃー、そんな毎日が幸せです。あっ、いえ、つまらないのですっ!」
「おい、いま言い直さなかったか?」
「いいえ、言い直していません……」
「クンクンクン…… 何やら面白そうな香りがしてきたぞー」
エレナの本心を問い詰めようとしていたところ、角田修平が割り込んできた。
面白そうな香りってなんだよそれ。
「修平君も一緒に同好会やろう!」
「同好会? いいね。何やる?」
こいつ調子いいな。ノリが軽すぎる。
こういう男こそ女子にモテるんだろう。
それに、僕とは違ってそこそこ良い顔だ。
髪をツンツンさせて、ちょっとキザっぽいけど。
「占い同好会よ!」
エレナが高らかに宣言した。
「占い同好会か-、いいね栗沢さん。あれ? うちの学校にそんな同好会あったかな」
「作るのよ!」
「作るのかー、スゴイねー」
いやな予感がしてきた……
「生徒会室へようこそニャ! 生徒会執行部は皆さんの楽しい学園生活をより楽しくするために日々研鑽しているスペシャリスト集団なんだニャー。何でも相談してほしいニャー!」
僕とエレナは生徒会室に来ていた。
小柄で活発な感じの会計担当の巻田先輩は、語尾に『ニャ』をつけてキャラ作りに絶賛奮闘中のようだ。
もう一人、黒髪ロングで清楚な感じの赤縁眼鏡をかけた副会長、神林先輩が応対してくれている。
さすがは設備自慢の芝桜学園だけあって、来客用のソファーはふかふかして座り心地がいい。
「まずは部員を5人集めること。そして顧問の先生を見つけてくること。その上で生徒会執行部の承認を経て、同好会の設立が認められるのだが……」
神林先輩は赤縁眼鏡をくいっと押し上げ、エレナが書いたお手製の提案書に目を通している。
「活動内容にある『お悩み解消』って何なの? 占いと関係あるの?」
「占いでは解消しない悩み事も、私の魔術で一晩のうちにすっきり解消させますよ、という意味です」
「あなたふざけているの?」
「いいえ、マジですが?」
「そっかぁー、神ちゃんこの子、噂の転校生ちゃんだニャー」
「ええっ!? 財団関係者なの?」
巻田先輩がエレナを指さして、ケラケラ笑った。
神林先輩は立ち上がり、3歩下がって距離をとった。
「そっかーだから占い同好会かー、うまいこと考えたニャー、君たち金儲けを狙っているニャ?」
「いいえ、純粋に占いを真剣に愛し、日々研鑽するための同好会です」
エレナがそう言い切った。
「そ、そうなの。それならば構わないかな…… すまない取り乱した。財団の関係者はみんな金儲けのことしか考えない怖い人だという噂を真に受けてしまったようだ……」
と乱れた長い黒髪を整えながら神林先輩は座り直した。
「でも、純粋に占いに取り組む活動なのに『お悩み解消』って、よくわからないのだけれど……」
神林先輩が僕をチラッとみて、助けを求めるような視線を送ってきた。
きれいな瞳の人だな。
眼鏡を外したら、絶対美人に違いない。
黒髪ロングで体格も大人っぽい。推定Dカップ……
「いてっ!」
隣に座っているエレナが足を蹴ってきた。
僕にも何か言えということだろう。
もっと優しくコツンとやってほしいものだ。
「あのう、活動内容の件は今後検討させていただきますが、部員と顧問の先生がそろえば生徒会執行部の承認はすんなり通るのでしょうか?」
「それは問題ないニャー。部活動と違って同好会は予算を出さないから、いくらでも量産しても大丈夫ニャー」
巻田先輩が両手で猫のポーズをとり、僕にウインクしてきた。
うっ…… かわいい。
小柄でいわゆる幼児体型な巻田先輩……
2コ上の先輩のくせに、このかわいらしさは反則です!
「いててっ!」
またエレナから合図を送ってきた。
僕に頼らず自分からぐいぐい行けばいいじゃん。
そう思って目で合図すると、なぜかにらみ返されてしまった。
そんなやりとりを見かねた神林先輩が、
「では、部員の確保と顧問の先生が見つかったら、申請書の書き方を説明しますのでまた来てくれ」
と話を切り上げてくれた。
生徒会室を出ると、角田修平が僕たちを待っていた。
「占い同好会の活動場所見つかったぜ!」
なにそれ、話の展開に僕の頭が追いつかないんですけど……




