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落ちこぼれ魔導師が学園で何かを始めるようです!  作者: とら猫の尻尾
第1章 落ちこぼれ魔導師、普通の高校へ行く
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第10話 入学手続き

「それでさぁー、あの凶悪女ったら、理事長の胸ぐらをつかんで『私の息子に手を出したらこの学園の施設すべてを破壊する』なんて凄みやがってよー。相手は老いぼれ魔導師なのに容赦ないんだなー」


 私は悟さんのお父様が書斎として使っていらっしゃる部屋をお借りして就寝前の身支度中。さっきから私の使い魔の愚痴が止まらない。


 話を要約すると、年増悪魔…… もとい悟さんのお母様と共に私の親代わりの理事長に、私のことで交渉に行ってくれたみたい。バットは2人の間に入ってくれて、悪魔VS財団の全面戦争の危機から救ってくれたみたい。


 私の使い魔は普段はツンツンしてるのに、いざとなったら私を助けてくれる。


「エレナ…… このタイミングで笑いかけないでくれよ。気持ち悪いよ」

「はいはい。それで、どんな交渉話になったの?」

「自分の息子に手を出せないように、エレナを今すぐ養成学校へ呼び戻せとか、エレナを二度と外に出すなとか」


「あの年増悪魔がぁぁぁー!!」 


 いけない。夜中に大きな声を出して私ったら……

 悟さんが起きちゃうわ。落ち着くのよ、エレナ!


「でもさぁ、もう既成事実を作っちゃったんだよね-、エレナ。サキュバスに先手を打てたじゃないか。どこまで進んだんだよ、人間君と」

「そ、それは言えないわよ……」

「じゃあ――」

 と言ったと思ったら、バットが私の右肩に留まってムラサキ色のぬいぐるみがポトリとカーペット敷きの床に落ちる。

 私と同化しちゃった!


「あーっ!! 卑怯よバット」

《ふふふ、心を読んでやるぞー。さあ、人間君と何があったんだー?》

「ううっ…… 本当は何にもなかったですぅ-。悟さんが何もしてくれないし、言ってくれないから、私から強引に『私の彼氏です』って知り合いに紹介しただけですぅ……」


《……》


「……」


 あれれ?

 私と私の使い魔はC契約なので…… 私の心を直接読むことはできないはずでは?


「バットのばかぁぁぁー!」


 私は涙目でドアに向かってムラサキ色のぬいぐるみを投げつけた。

 そのとき、ドアが『ガチャ』と開いた。


 年増悪魔、もとい悟さんのお母様の顔面にムラサキ色のそれが直撃した。

 そしてポトリとカーペット敷きの床に落ちた。

「邪魔するわよ」

 努めて冷静に、悟さんのお母様は対応してくれている。

 あっ、1歩目でムラサキ色のそれをぎゅっと踏み、それからこちらに歩いてきた。 

 目が笑っていない。こわい! 

「この書類に必要事項を書いて、明日の朝提出しなさい」

「えっ?」

「悟が通う高校の入学手続きよ」

 書類を見ると、保護者の記入欄には親代わりの理事長のサインが書いてあった。

「あの…… どうして?」

「財団の理事の『娘』なんだから、私学の高校なんか、二つ返事で入学許可が下りるわよ。あんた、もっとうまく立ち回りなさいな」

「で、でも…… どうしてあなたが?」

「私はあなたに手を出さない。あなたも息子に手を出さない。それが私たちが結んだ同盟」

「……そうですね」

「でも、息子はあなたのことが気に入ってしまった」

「えっ? そ、そそ、そうですか」


 悟さんのお母様は、フッとあきれたような表情で、

「あなたたちを見てると…… まるでお子様ね」

「だろう? もやもやするだろう」

 いつの間にか依り代のぬいぐるみに戻ったバットが口を挟んできた。

 私は顔を真っ赤にして、ぬいぐるみを締め上げる。


「エレナさん! あなたには息子の監視役の任務を与えます! 息子に変な虫が寄ってこないように、私が密着できない時間帯はあなたに代役を任せるわ!」


 人差し指をビシッと私に向けて格好良く決めてきたけど、言っている内容は最低だわ、この年増悪魔。


「分かりましたお母様! 私は悟さんの監視役として四六時中密着します!」

「ああ、でもエレナさん。今日のように『私の彼氏ですぅー!』みたいな嘘をついてはいけませんよ!」

「み、見たんですか? 今日の悟さんの記憶」


「……」


「今日もまた見ましたね」


「……だって」


「だって?」


「だってぇー、どこぞの泥棒猫が何かしでかしたんじゃないかって、心配するじゃない-。親としてはー」

「最低です! この年増悪魔ー!」


 私たちはこの日3度目のケンカをした。

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