第9話-4
ギシギシ軋む階段を上がりながら、
「お婆さんの誤解が解けたんだよな」
僕が尋ねると、エレナは僕から視線を外して……
「たぶん……」
自信なさそうな答えが返ってきた。
「本当に、本当に大丈夫なんだよな?! お婆さん、何て言っていた?」
「……こんどやるときは、もっとちゃんとした場所でしなさいって」
「誤解されたままじゃん!」
僕は階段を踏み外しそうになった。
「ここが私の部屋です」
未だショックから立ち直れない僕を、エレナが申し訳なさそうな顔で部屋に案内してくれた。
部屋の真ん中にガラス製の丸テーブルがある他は、特に何もない四畳半の部屋だった。
窓の枠には、カラフルな色のぬいぐるみが13個。すべて僕とエレナで獲得した景品だ。バットの依り代としては『ボツ』になった物でも、ちゃんと飾ってくれていたんだ。ちょっと感動。
その他には、いくつかのカラーボックスが置かれていて、化粧品道具や小さな鏡などが綺麗に並べられていた。
あとは……
「着替えとかはどこに収納しているの?」
「それ、気になります? 訊いてどうするつもりです?」
エレナがジト眼で見てきた。
僕が返答に困っていると、
「ふふふ、冗談です。都合が悪い物はすべて押し入れの中です。さあ、荷物整理を始めましょう!」
とは言っても、ほとんどの荷物は『都合が悪い物』が入っている押し入れの中にあるので、僕はその中が担当となった。
下着類が入っていると思われる衣装ケースは触らないようにと厳重に言われているけど、そもそも僕は下着に興味を示すような男ではない。
あ、でも……
エレナの下着と思ったら、ちょっと興味があるかな……
僕が衣装ケースをガン見していると、
「あっ、本の中身は見ちゃダメですよ!」
「はっ、はい! 見ません、見ません、絶対見ません……」
「……? 本当に見ちゃダメですよ。魔術師養成所の資料は財団の企業秘密なんです」
段ボール箱に入っている本の表紙には「魔導師と魔術師の微妙な関係」「初めての魔法陣」「詠唱に使える単語集」など、ちょっと興味のあるタイトルが並んでいた。
その他にも「手品師になるには」「奇術師になるには」「詐欺師になるには」などの本もある。
何でもアリな学校だな。
あれ、写真が挟んである。
見てはいけない写真だったらどうしようと、ちょっとドキドキしたけれど、ゴスロリ衣装を着たエレナと幼い女の子が写っているだけだった。
……
ちがう。
よく見るとこれはエレナじゃなく、知らない女の人だ。
そして女の子の方が幼少期のエレナだ。
僕はそっと元の位置に挟んで、段ボール箱にしまった。




