第8話 サキュバス
第8話 サキュバス【ヒロイン視点】
いよいよヒロインの魔導師としての活躍が見られるか?
「そろそろいい頃合いね」
「そうだね」
悟さんが寝息を立て始めたのをみて、私の使い魔に確認する。
悟さんのベッドの周囲に描いた魔法陣は、私のオリジナル。
実のところ、あまり意味はない。
雰囲気作りが大切なのよ。
「バット、お願い!」
「ほいきた!」
バットが私の右肩に留まり、そして抜け殻となったムラサキ色のぬいぐるみはポトリと床に落ちる。
同化が完了。
「詠唱を始めます」
私は、養成所中等部の3年間で学んだすべての知識を生かして考えた詠唱を唱えていく。実のところ、この詠唱の内容にも意味はない。自分自身がトランス状態になるために必要な儀式なのだ。
「ああっ、きたきた、きたよぉぉぉ!」
《エレナぁ、その言い回し考え直した方がいいよ》
私の使い魔が余計なことをいうから、少し冷めちゃった。
その後、バットの魔力を借りて、私達は悟さんの夢の中へ入ることに成功した。
――ここは悟さんの記憶の世界。
幼少期から現在に至るまでの、記憶の塊が宇宙空間のような場所に浮かんでいる。
私がそれら記憶の塊をちょこんと刺激すると、悟さんはその夢を見るの。
そうだ、私と出会った時のことを調べ――
《おい、私利私欲にまみれた魔導師がどうなるか知っているか?》
いけない。
この世界では私の使い魔は私の精神と完全同化しているんだっけ……
マジギレしたバットの怖さを知っている私は、純真な心を取り戻すことができたわ。
私は悟さんの一つ一つの記憶の塊を調べていく。
小学4年生のころまでは、自分の容姿について特に気にしていなかったようね。
「でも、ちょっと違和感を感じるわ……」
《エレナも気づいた?》
そう、これらの記憶の塊は何者かによって何度も刺激された痕跡が残っていた。
しかも、私が調べたすべての塊に!
私はその確証を得るため手当たり次第に記憶の塊を調べていった。
小学5年生の記憶が目に留まる。
誰もいない教室に悟さんを呼びだして手紙を渡している女がいる……
なんなの、この女! ウキィー! むかつく。
地獄に堕としてやるわ。
《エレナ、私利私欲の魔導師は……》
いけない。
純真な心を取り戻さなくちゃ。
密かに女の顔を覚えておいて後で嫌がらせを…… と思ってその女をみると、
「ぼんやりしていて、何もわからない」
《これ、記憶の痕跡しか残っていないね。誰かが消し去った跡を見せられているようだ》
何それ、そんなことができるのって……
《《《《《そこまでよ、泥棒猫さん》》》》》
私達はその声によって強制的に現実世界に引き戻されてしまった。




