第5話-2
夜中、僕は何度も目を覚ました。
目を覚ました後に残る違和感……
まるで何か見えない力によって過去の思い出が引きずり出されていく感覚……
こんな風に感じている現在も夢の中なのだろうか。
僕は目を覚ますたび、過去の体験にまつわる夢を見ていたようだ。
たとえば小学生の頃、近所の子と些細なことをきっかけに喧嘩をした。母にそのことを話すと、翌朝には何事もなかったかのように解決していた。そんな体験……
たとえば小学5年生のとき、誰もいない教室に呼ばれてクラスの女子が恥ずかしそうに手紙を渡してきた。付き合ってくださいみたいな言葉が書かれていたけれど、どうしたら良いか戸惑っていたら、翌朝には何事もなかったように手紙が消えていた。そんな体験……
中学に入る頃には、女子がバレンタインデーのチョコを渡そうとしてきても、華麗にスルーする術も身についていた。下手に受け取りホワイトデーにお返しを渡したら「義理なのに本気に受け取られたみたいー、キモー!」とか言われるのがオチだ。
そうだ、女子はそれを狙っているに違いない。
僕をこの社会から陥れようと、虎視眈々と狙っている……
放っておいてくださいよ-。
僕は社会の片隅で静かに暮らしていくつもりなんです。
みなさんに迷惑をかけませんから。
そんな中学生時代の体験…… というかそれは現在進行形の話……
朝を迎えた。
僕の目からは涙がこぼれ落ちていた。
目の前にはムラサキ色の物体……
コウモリのぬいぐるみがこちらを向いている。
あれ? こいつも泣いている?
まさかまさかー、目の錯覚でしょう。
僕の涙がそこまで流れていきましたか、そうですか。
僕はコウモリを抱きしめ、
「今日一日が、よい日でありますように」と祈った。
第5話 おわり
次回は、第6話 私のポケベル【ヒロイン視点】
読者の皆さんはポケベルに思い出はありますか? 今でも自治体や企業で使われているそうですよ。




