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準備 3

「情報部だと?我がフリッチュ司令官殿は何を企んでるんだ?」


「まだ詳しいことは決まっていないようですが、どうやらスペインに派遣される義勇軍の一員になるみたいですよ」


 クルト中佐は、まるで他人事のように自分の今後について説明した。


「スペインに派遣するのは別の情報部の人間でいいではないか」


「それが、どうやらSSが目を付けたらしく、情報部員は全てSSのメンバーで固められるみたいです」


「なんだと!?」


「これに困り果てたカナリス提督がフリッチュ総司令官に相談したみたいです。で、ヴァルザー特務中尉をこっそりと情報部で学ばせることに」


「それで、なんでお前が一緒になるんだ!?」


「ヴァルザー殿の正体を知っている人間が一緒にいたほうがいいだろうという事で、私が選ばれました。総司令官曰く、不本意であれば閣下にお願いすると伝言を頼まれましたが」


「ばかやろー!ったく、俺はとんでもないのを拾ってしまったわい!」


 さっきと180°違う発言である。


「…で、異動はいつになるのだ?」


「今月末には行かなければなりません。名目上は需品科ということで後方勤務の補給が専門になります」


「そうか、それなら寂しくなるな」


「私もです」


 憎まれ口に皮肉の応酬であったこの師弟コンビも、もうそろそろ終わりを迎えようとしていた。


「…昇進はするのか?」


「えぇ、異動に伴い大佐になります」


「…よかったな。ヴァルザーはどうなる?」


「ラインラント進駐後に大尉へ昇進するでしょう」


 ラインラント進駐を、ヒトラーはほぼ100%の確率で強行してくる。この作戦で補給任務を指揮するのは、この作戦立案者にしてフリッチュの意向を汲み取ったヴァルザー特務中尉になる。作戦が成功しようと無かろうと、補給関連に問題を引き起こさなければ無事昇進。それが総司令官らが描いた筋書きであった。


「閣下、私の後任なんですが…」


「フリッチュは何か言っていたか?」


「閣下に任せるとおっしゃっておりました」


「…となると、ヘルツァーだな」


「…大丈夫ですか?」


「能力はあるから、まぁ大丈夫だろうよ」


 そうじゃなくて…とクルト中佐は言いそうになって言葉を飲み込んだ。クルト中佐が心配したのは、ヘルツァー少佐の能力を心配したからではなく、次期副官の小言にボックが耐えられるかと言う点であった。もしかしたら、いやほぼ確実にイライラはしてしまうだろうと。


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