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日食の町で  作者: 白神 こまち
第二章
16/17

記憶の断片より 菱池美沙

 おなじ天文部に入部した友達の由利へ、なんと声をかければいいのか美沙は悩んだ。



(輝明のヤツ、私に告白するより、由利と別れるのが先でしょ? 信じらんないわよ)



 高校入学して間もなく天文部に入部したことがきっかけで美沙と由利は友達になった。


 そして今年の初め、隼馬たちとバンドを組んでいた輝明と由利が交際をはじめた。


 2年生に進級すると輝明が天文部に入部した。



(天文のての字も興味ないくせに。きっと、あのときから私のことを見てたんだわ)



 金環日食観測旅行の1週間前である。輝明が由利と別れるはなしもせずに美沙へ告白したのだ。


「由利と付き合ってるんでしょ? 由利は? なんていってるの? 別れたの?」

「ああ? 由利にはなにもいってない。いいんだ、由利のこと好きじゃなくなったし」


 輝明のことばに、美沙は怒りをおぼえ、その場で輝明の頬をたたいたのだった。



(こんな酷いことってないわよ! そのあと輝明に一方的にふられた由利はショックを受けちゃって2日も学校を休んじゃったし、今回の観察旅行だって本当なら一緒に来るはずだったのに!)



 しかも輝明は告白を平手打ちで断った美沙を逆恨みして、



(きっと慶介とかに私の悪口をいいまわっているんでしょ。男以前に人として最低よ)



 なのであった。


 憤慨する気持ちがある一方で、しかし、



(……異界で輝明の最後を見たとき、それが報いなんだとおもったわ。でも、冷静になって振り返って見れば、あんな死に様で生涯を終えることが罰とうのなら、それはあまりにも重すぎる。因果応報といえばそれまでだけれど、それにしたって、残酷だわ)



 蟠りが残ったままスッキリとしない。



(由利になんて説明したらいいの?


「あなたの元彼、ずっともどって来ないわ。この世界に彼の魂はないの。あっちの世界に永遠に取り込まれたまま。もしかしたら、いま、この瞬間、別の生き物として生まれ変わってるかも。あっちの世界で」


 ああ、ダメ。全然慰めになってないわ。まったく、輝明のヤツ。死んでからも私に迷惑をかけるなんて。やっぱりあれが報いよ。ああいう身勝手な男、タイプじゃないわ)

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