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白魔法と行商  作者: tito
プロローグ
1/1

護衛のいらない行商人

町から町へ伸びる街道には

必ずと言っていいほど近道があります、と言ってもたいていの場合は、危険だから使われませんが


そんな”近道”の真っただ中にオオカミの群れに対峙する集団がいました


グルギャッ

ググガァアアアアアア

グギャァアアアアアアアアア


「今夜はオオカミ鍋じゃね」

「ここの街道数多いっすねー」


お揃いの色違いのマントかローブをはおった6名ほどの男女が、多いというか多すぎる数、三桁ちょいの角のあるオオカミに包囲されている状態でした


しかし先の言葉のように彼らに緊張感はない、どちらかと言えば獲物を目の前にした三日間断食中の虎のような眼をしています。


まず前に出たのは一人の少女

この行商の看板娘その一【青ちゃん】

艶のある藍色の髪は太ももまでのサイドポニーテール、ぱっつん気味な前髪から覗くまるい深海の目、ローブの下は私立学園のようなブレザー、青いチェックのスカートからスニーカーまで伸びる生足がまぶしい



「ちょうど雨降った後だからよかったっすわー。逃げんように囲んでおきましょう」


言うが否や、なんとなしに突き出された腕から梵字のような記号が四散し、一泊開けて『ビキリッ』と群れと自分たちを囲うように氷のとげが地面から生えました


「・・・・氷」

「あ、ごっめん。忘れとりました、黒さん機嫌直したって!」

「・・・いい、青子が前に出た時点で僕の火魔法使えないのしってた」


無表情の中に(´・ω・`)感を漂わせるのは

長身の"火力系"魔法使い【黒さん】

桃色じみた白い髪に浅黒い肌、身長190くらいの男性。足元まで付きそうな赤茶のローブからはうかがい知れないが、中華服愛好家で今日も赤い中華服と黒いズボンを着用、何気に女性陣にチャイナ服をプッシュしているお方。


行商である以上、商品を積んだ馬車を守る係と"狩る"係に分かれており。お役御免となった黒さんはそそくさと馬車まで後退。結界が張ってあるので戦う際は結界の外まで出なければなりません


「・・・職ヲ失っタ」

「再就職こっちだよー・・・うん、まぁ。黒さんの火力だと氷柱とけちゃうもんね」

「あんのバカ娘考えろゆうたじゃろが」

「・・・静まりたまえ緑さん、きっくん交代頼む」

「いいですよ、土と相性いいですし。いってきます」

「おお気をつけるんじゃぞ」


礼儀正しく飛び出していくのは

年端もいかない少年分かりやすく言うとショタな【黄色くん】

黄色い頭に小金の目。短いローブをひるがえしていく姿は大変微笑ましいが、土属性キャラの哀しい"サガ"ゆえか、岩をも粉にする怪力の持ち主。

服装はモスグリーンのボーイスカウト風、膝小僧が愛らしい使用(半ズボン)


それを心配そうに見ているのは【緑さん】

看板娘その二がこの人です

カーキのローブとクリーム色のシフォンなワンピース、森ガールという言葉を固めて作ったような森ガール然とした容貌で、甘栗色の腰まであるボヘミアンにターコイズのたれ目。田舎のおじいさんっぽい口調が若干残念さを醸し出す少女だ。ちなみにある理由からたいていの人には敬称付きで呼ばれている



「おお、きたっすねきっ君!コレを一人で相手はきついっす」

「え・・・さっき『こんなの一人でやれますよー』的なことを言ってませんでしたっけ」

「きのせいでっす!結界あるんだから緑さんも呼んでよー!」


黄色君こときっ君が青ちゃんの元にむかうとすでにこれまでの4.5分の間で周りが血まみれになっていました。青ちゃんの使う獲物は2Mまで伸びる薙刀。遠心力と体のひねりを利用して隙があかないように連続で振り回し、有る程度勢いが収まると、今度は地面から氷柱をはやして権勢をかけます

後続のきっ君は足でけり上げた人の背程の土塊をこぶしで砕き飛ばして砲弾代わりにしています、いわゆる工夫版中距離攻撃ですね


しばらくその状態で着々と数を減らしていく二人ですが

「伏せろ、こわっぱども!」

突如後ろから聞こえた声に身を伏せます

一拍置いて周囲の木々から鋭く伸びた枝が前方に居た数十匹をきれいに貫いてゆきます

「緑さん!」

「おおー!だいぶ減ったっすね!」


**************


残りは半数と言ったところで

馬車の方から声がかかります

「これ以上は在庫あっても仕方ねーから戻ってこーい」


この号令をかけたのは行商のリーダー【白さん】

癖っ毛を無理やり抑えたのか、どこかもっさりした黒髪に黄色みの強い茶色のネコ目、灰色のローブの下にジャージ手にな何かを着用し、見た目的には青ちゃんとどっこいどっこい、言っても18くらいの外見だがれっきとしたここの責任者。


「おい佐藤、いま毛皮何匹分だ?」

「30は採れんじゃねーの?」

「あと5はほしいな」

「聞いてからあいつら呼び戻しやがれ屑」

「だあってろ平社員」

「お前の飯ぬくぞリーダー、五枚は諦めてさっさと残り片せよ、鮮度落ちるだろーが」


白さんと言い合っているのが雑用係の【佐藤】

こげ茶に近い金髪を短髪にした青年で黒さんよりは低い長身、黒いスカーフを巻いてどことなく下町に居そうな服装に居酒屋っぽいエプロン着用の非戦闘員。戦闘以外の雑用を仕切っていてたいていは戦闘中姿を消すか在庫を整理している。



「たっだいまー」

「ただいま」

「今帰ったぞー」


はいはいおかえりがんばったねー

と投げやりに出迎えると、白さんはおもむろに魔法使い然としたステッキを取り出し、いまだ残っている数十匹のワンちゃんたちに向けます


「バリアー」


いわゆる魔法で作られた障壁です

ここの世界では、魔法で特定個所の空気を固定・・・魔力の箱に閉じ込めるイメージで生成されます。この箱、普通の物体のように質量と重力があります。


白さんはそれをオオカミの上空、400m地点に生成しました。重力があるので落ちます。生成されたバリアは広範囲をカバーし、なおかつ壁のように厚みを付けたもので、高度400から加速魔法をかけつつオオカミの群れに墜落して行きます。素材をつぶしては元も子もないので何メートルまで落ちるかを魔法で設定、頭を押しつぶす程度の高度で自然消滅します。

回りくどいですが、本来防御用の術式なので仕方がありません。素材もきれいに採れ、一掃できる点は行商人的に美味しいです。

とにかく、こうしてオオカミの群れは資源へと転換されたのです

しかし行商人足るもの、資源を資源では終わらせません素早く『商品』へと昇華させてこそ腕の見せ所です。


「佐藤!黒!緑さん!解体急いで!青子は冷やせるだけ地面冷やせ!黄色は他にモンスター来ねぇか作敵Maxにしろ、いいか!血の一滴足りとも売りもん逃すなよ!!」


『おう!!』


先ほどの余裕具合は何だったのかと言うほどの激戦具合、広範囲の冷凍で腐るのを防ぎつつリーダー含む四人で解体、血のにおいにつられてモンスターが来ないか黄色は土魔法で作敵と素晴らしいチームワークで処理していきます。


本来、このオオカミは中級冒険者が5人パーティーを組んで10匹程度と当たるのがセオリーの決して弱くはない部類に入ります。

それをさっくりお金に換えていく彼ら


そんな彼らのことを、人は

「常識外れ」「人外魔境」「キチガイ集団」


転じて――― 外商人 と呼んでいました




「して佐藤や、この毛皮、次の町でのレートはなんぼじゃ?」

「あー一枚単位20くらいじゃね?」

「え!さっきの町のがいいじゃん!損っすよ損!」

「ひきかえします?」

「・・・・肉の鮮度的に前の町のが近い」


「あーうっせぇ!わーったよ引き返すよ!金と命はあってなんぼだ!荒稼ぎしに行くぞテメ―ら!」





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