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少年は選択する3 ライリ

 今日も忙しかった、仕事したとタイムカードをきる。

 マキナショップに正社員として転職してからはどうしてもこの時間になってしまうな。

 事務方担当の子がいるけど、他のキャリアさんところと違って独自で準備しなきゃならないものが多すぎる。

「ライリーおつかれさま」

「ああ、オーナーお疲れさまです」

 近くにあったディスプレイに中年男性の姿がうつる。

 店長兼オーナーの彼の肉体はテラーになった際に失われてしまったらしい。

「明日はオフだったな」

「はい。なので今日は飲もうかと……」

 微妙に嫌な予感がしたのだ。

 でも話は最後まで聞かないとならない。

「すまないんだが」

「すまないんだが?」

「俺の代わりに明日空集の大学の新入生用の説明会に出席してくれ」

 がくりと膝をオーバーリアクション気味に折る。

「まじですか」

「まじだ。悪い、会議が入ってな」

 3月4月はテラーの他に一般のお客様も多いのに……。

 やっとのお休みだと思ったのに……。

「了解です。大学向かう前に店によりますので必要書類の準備お願いします」

「ありがとうな、ここに8時半までにきてくれ」

 しかもいつもより1時間早く出勤ですか?!

 返事をして裏口から帰路につく。

 今日は紅灯地区で飲んで朝帰りするつもりだったのだけどうまくいかないな……。


 いつも通りに髪をまとめてピンで留める。

 本日はいつもの制服ではなく法人用のスーツで出勤。

「ライリー姐さんお外でお仕事ばーじょんです」

「テンション高いですねライリーさん」

「休出になってだだ下がりを無理矢理あげてんですよ」

「ですよねー。荷物積んでおきますね」

 出勤の早い事務の子にそう答えて素に戻る。

 説明要項のリストを見て何を話そうか悩む。

 空集で大きな大学は2つ、1つは国立の新田大学でもう1つが今日行く私立の空集大学。

 大学に通うテラーも増えて来たし、まだ一般的にテラーの存在が認知されていないことから大学側が新入生に対して説明会と併せて講習会をおこなっているのだ。

 オーナーは毎年これの講師として参加しているが、たしかボランティア価格で請けている。

 店から車で15分、職員用の駐車場に車を止めて大学内へ。

 大学で案内された待合室には市から派遣されて来たらしい帯刀がお茶をすすっていた。

「お久しぶりです」

「これは、ライリーさんお久しぶりです。今年は貴女なのですね」

「いえ、小中が急用で出席できなくなりましたので代理で講師として参加します。至らない点もあると思いますが宜しくお願いします」

 挨拶をしてオーナーが毎年何を話していたのかを仕入れて講習会に望む。

 ぶっつけ本番になったのはもう知らない。


 入学者の1割がテラーだなとあたりをつけながら帯刀の講習を眺める。

 あ、サキョウの甥っ子君もいる、友達さっそくできたかな?背丈大きいから目立つんだよね彼。

「帯刀さん帯刀さん!包帯ひっかけてます!」

 彼の透明な顔が露出するのを大学の職員さんが見つけて声をかける。

 意外とおっちょこちょいなんだよな、帯刀。

 さてと、私か。

「初めましての方は初めまして。ご存知の方はお元気でしたでしょうか?本日講師代理を努めさせていただきますライリと申します」

 画像を後ろのモニターに映し自己紹介から入る。

「普段は私、ケータイショップの接客をしているものでして、こちらが喋るだけというのは苦手です。なのでレジュメの内容を説明した後は質問に応答形式で進行していきたいと思いますので、質問はその時にまとめてお願いします」

「先に帯刀さんから説明があったように今年空集市の人口の3割はテラーになりました。といっても空集以外からこられた多くの皆さんはまだ慣れないかもしれませんが、外国人が多く住んでると思えばあとは同じです。言語もそろっていますしね」

 レジュメの内容を並べながら話していく中で気付いたので、言葉を一度止める。

「すいません職員さん、一度電気つけてください。誰か呼吸音がやばい」

 モニターのために暗くなっていた部屋が明るくなる。

 少女が一人壁際で倒れていた。

 ひゅーひゅーと喘いでいる。

「おい医務室に」

「……うん、連れてっちゃ駄目。体弱いなこの子」

 小さな少女を抱き上げてよろめく。

 中腰で彼女を支えた。

「救急車呼んでください。それとテラー登録されているみんなは近づかないでね」

 近づこうとしたテラーの職員が眉をひそめた。

「アレルギーかライリー」

「多分。新大病院で検査してもらってください。誰か鞄から茶色のカプセルケースから薬だして」

 颯の横にいた少年が近づいて私の鞄から薬を取り出す。

 薄黄色のタブレット錠を少女の口の中に放り込ませた。

「すぐに楽になるからゆっくり舐めて溶かして。うん、いい子だ。そう、ゆっくりね」

「ライリーさん、アレルギーってなんですか?」

「普通の人の中に一定の条件下でテラーと一緒にいると体調くずす子がいるの。花粉症みたいな症状から死亡しかけたケースもある。ここの医務室の先生、テラーですから行かせるわけにはいけなくて」

「ゲホっ。ごほ、やっと……息でき、ケホ」

「うん、薬が効いたってことはやっぱりアレルギーか。大丈夫だよ、アレルギー出るときとでない時とあるから。まずは検査してみましょうね」

 苦しかったのか抱きつかれて泣かれてしまった。

 それと、だ。

「少年、薬出してくれてありがとうね」

「いえ、そんなことないです」

 ……自覚ないかなこの子。

 長い髪をひっつめにしてあどけなさがまだ残っている、オタク風の少年。

「それと君も病院行って検査受けなさい」

「へ?」

 きょとんとされたが続けて話す。

「君、テラーよ。99%ぐらいの確率で」

「……まじですか?」

「私、テラーかそうじゃないか間違えたこと一度もないわ」

 自覚と症状が無いタイプが意外と若い世代には多い。

 色々新入生には説明しないと理解の下地ができない。

 アレルギーについて変な誤解が生まれると私の責任になってしまう。

 オーナーに以前それで給料引かれたからなぁ。

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