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少年は選択する1 サキョウ

 テラーという存在がこの世界に訪れておおよそ5年と言われています。

 彼らが最初表舞台に出た時、世界は選択を迫られました。

 隣人とするか敵とするかです。

 日本は隣人の道を選び、来訪者たちの住める環境を整えてきました。

 いくつかあるモデルケースの中で一番うまく行っているのが空集市と学会では言われ。

 防犯などの観点から見てまだまだ油断できず、政策と行政施策の改善が必要と思われます。

 日本が法的にテラーと呼んでいる方は実は二つのパターンいるのですが。

 一つは異世界からのやってきたあちらの方々。

 もう一つは直接的に間接的にテラーによって変質をとげてしまったこちらの人々。


 その連絡があったのは溜池くんの家に青木嬢が住み始めた年の暮れでした。

「はい、サキョウです」

『あのさ、いい歳していじけないでください兄さん』

「いじけてなど。あなたのおかげで私、本名で呼ばれることがなくなってしまっただけで」

 電話の相手は東京に住む妹で、彼女はその返答にケラケラ笑います。

 相変わらず理解に苦しむ笑いの点です。

『いつもの兄さんに頼みが一つ』

「おや珍しいですね、あなたが頼み事ですか」

 回りくどいとよく言われる僕とは違い、妹の発言は単直。

『息子を空集の大学に通わせます』

「……何がありました?」

 甥のハヤテは今年高校3年でバスケットボールの全国大会で優勝したチームの一員でした。

 今は部を卒業して大学もスポーツ推薦で決まっていた筈です。

 逆に何かあったからこうやって妹は僕に連絡を取ったので。

『簡単。テラーになったもんで推薦取り消されて。無理矢理出願させて入試受けさせます』

 妹は内心で感情的になっているのかわからず、僕と違って淡白に事実を告げます。

 話はこうです。

 テラーにさらわれた後輩を助けるために無理したら、自分がそのテラーと同じものに感染してしまったとのこと。

 一言で説明は終わりますが、生活はそうはいきません。

『私から言わせれば空集は異常。何なのその住人のキャパシティ』

「なんせ今人口の30%近くがテラーの都市ですからねえ。他の都市が0.3%でしたか」

『都市部でね。説得は彼の友人と指導者がやるわ。私は手続きとフォローをできるところまで』

「息子に厳しいのか優しいのか。わかりました、手続きに必要なものが通常と異なりますのですぐに送るようにします。颯は今日?」

『ふて寝、可愛いわ』

 やはりあなたの心の琴線がよくわかりませんよ妹。


「……サキョウ、私不思議。まず治療ってのがセオリーだと思うのだけれど、そうしないの?」

 テラーで我々と限りなく同じ人間の青木嬢は溜池くんに持って来た弁当よりも小さく可愛らしい弁当箱を広げながら首を傾げます。

「体が変質してしまった人間が元に戻れた例は公式にはまだ無いのですよ、青木さん」

「ふむ。5年近くで一つも無しですか。こちらの医学の発達が遅れていないことを考えると興味深い話です」

 学校への転入申請が通るまでは私や溜池くん他警察の職員が彼女の勉強を見ています。

 といっても、この方は若くしてずいぶん色々な知識を身につけているようですが。

「あなたの世界ではそういう変質を遂げた方はいましたか?」

「いたですよ。ただ、彼らは正統な進化と血脈の中で生まれた人々です。父の従兄弟は私の世界で有数のソレでして。一度あったことがありますですが、正直気色悪かったです。しかも会った数年後にそこの一族に追い掛けられたので嫌なことしかおぼえてねーです」

 そういうと、青木嬢は少しこげ気味の卵焼きを口にします。

 なんでも今初めて腰を据えての料理に挑戦中だそうで、色々試されているようです。

「サキョウ、聞いたぞ。何でも侠気おとこぎあふれる甥だそうじゃないか」

「おや、角田くん謹慎は今週末まででは?」

 巨体を特注の椅子におろして、彼は頷きます。

「応永の事件の肉体労働で駆り出されることに。ま、人員が足りないって奴だな」

「あなた実は懲りていませんね」

「ひねくねるなよ。背が伸びなくなるぞ?」

「関係性が見えませんです」

 応永地区には近づかないように言わないとなりませんね。

「角田、応永ってどこですか?」

「ん?お前溜池に知らされていないか?」

「いいえ。駅名では見たことないのです」

 角田くんは指で青木嬢の卵焼きをつまみながら答えます。

「応永ってのは空集市の南にあるテラーたちが多くすむ裏地区のことだ。犯罪すれすれの奴も多いから一般人やカタギのテラーは近づかない。しかも力的に強い」

「……なるほど。わかりました近づきません」

 何度か青木嬢は瞬きすると角田くんの言葉に納得したように頷きました。

「それとサキョウ、その大学生どちらにしても事件に巻き込まれ体質なので応永に近づかせないように言っても無駄です」

 まるで彼女は甥をみたように僕に伝えて目線を弁当に向けました。



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