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朝の逮捕劇

青天の霹靂とはまさにこの事だろう。


朝起きたらあんなに可愛かったモウガンが、いつの間にか巨乳美女になっていたんだ。

なんでも、私が寝ている間にレベルアップしたらしい。

お陰で人型になった上に、胸も太もももデカイ美少女になってしまった。


……モンスターってすごい。


ぽけーっとした顔でそう思う他なかった。


「ヴェスティ様……」


とろんとした顔で甘えてくるモウガン。メルからの視線が痛いが、私としてもちょっと困るのだ。


もちろんメルに甘えられても困るのだが、あの子からハグされたり手を繋がれたりすると何故か胸がポカポカする。対してモウガンは、見た目は私と同年齢すぎて逆に困ってしまうというか……何なんだろうかこの気持ちは。


モウガンもかわいいかわいい私のパートナーなのは違いないが、メルに甘えられた方が嬉しいのは贔屓が過ぎるだろうか?


「んきゅう」


「うっ」


ほら、やっぱり。

メルが嫉妬したように甘えてくると、胸が苦しくなる。ポカポカする胸と勝手に赤くなる頬を誤魔化して頭を撫でている私自身、モウガンとの違いに首を傾げる他なかった。


この感情は一体……?


少なくともまだ今の私が知るには早い。分からないながら、そう思った。




いつもの朝の戯れが終わり、昼時。

モンスターテイマー達が集まるという闘技場で、モンスターバトルがあるらしいという噂を聞き付けた私たちは、それに向けた準備をしていた、


まぁ準備といっても、回復草(かいふくそう)だったり各種状態異常を治す木の実だったりの整理とか、すぐに終わるものだ。

準備を横目にテレビを見ていると、保護施設にて保護されていた凶悪なモグライヌが、何者かの手によって脱走したという報道が流れている。


……何故だ、嫌な予感が拭えない。気のせいだといいんだけど。


未だにベッドの上で戯れているモウガンとメル。お互いに威嚇しあっている様は大変可愛いが、嫌な予感が続く今は警戒させておいた方がいいんだろうか。


なんて考えていた時。

コンコンッと軽快なノック音が出口のドアから響いた。


……誰だ?

恐る恐るドアに近づいて、覗き穴を覗く。

見えた景色は、五人ほどの黒い服を来た人達がこちらを睨んでいるというものだった。


「開けてください」


今度は強めのノック音。


気付いたらメルもモウガンも私の隣に並び、出口を警戒しているようだった。触手を呼び出して状態異常か何かをかけようとしているメルと、ハルバードを肩に担いぐモウガン。


だが相手が誰か分からないため、慌てて二人を抑えた。


「開けてください」


「は、はーい」


尚も続くノック。

いい加減腹を括り、恐る恐るドアを開けた。


その瞬間──。


「やれっ!!!」


「うぐっ!?」


身体を襲う衝撃。何者かにのしかかられ、手錠を嵌められる感触がした。

部屋の方を見れば、モウガンやメルもモンスターの能力を抑える装置で無理くり弱体化させられ、手錠を嵌められている。


……気の所為かな?可愛らしい女から手錠を嵌められているメルの顔が、嬉々として捕まってるように見えるんだけど。


「捕まえました!」


「うむ、よし。これで無駄な抵抗はできまい」


「……すみません、一体何なんですかこれは?私たちが何かしましたか?」


うつ伏せにされた状態で周りの人間を見れば、胸元に警察のマークがある事が分かる。しかし私たちは捕まるようなことをしていないはずだ。


モウガンの進化の未申告?いや、発覚したのが今朝だから別に報告期限は超過していない。

メルとモウガンが他のモンスターを傷つけたとか?いや、ありえない。そんなことをするような子じゃないことは私が一番分かっている。


ならばなぜ、“最低最悪”と名高いマルデンブルクの“モンスター対策部”が出張ってきているのか、私には皆目見当もつかなかった。


「何をしたか、だって?はっ!自覚がない犯罪者ほど愚かな者はないな」


「っ、犯罪者だって?容疑者はともかく断定するなんて、よっぽど自信があるらしいわね」


「当たり前だ。でなければこうして捕まえたりはしない。口の利き方には気をつけろよ犯罪者達よ」


「……罪状は、教えてくれるんだろうね?」


私の問いに、男は鼻で笑った。


「簡単な話だ。“焔”だよ」


その一言で、背筋がぞわりと粟立つ。

焔と聞いて思い浮かぶのは、メルが1次進化した時に訪れた研究所で襲ってきたモンスターだ。


しかしそれが私たちになんの関係が?


「数日前、保護施設から消えた特別指定個体──コードネーム《アグニール》。その個体と接触した形跡が、お前たちにはある」


……接触?


視線が、無意識にメルの肩へと吸い寄せられた。

メルが私たちを必死に守り抜き、あのモンスターに淡く残る“焔の痕”を付けられた戦いだ。


「さらに危険指定個体であるモグライヌも、保護施設から脱走している。そのモンスターと最後に接触していたのは──そう、あのスライムだ」


彼らが睨んでいるのは──メルだった。

メルが脱走の手引きを?甚だおかしい。間違いなく誰かと勘違いしているだけだ。


もしくは誰かにハメられたか。


「……だから何?たまたま通りすがったモンスターと接触しただけで、拘束されるの?たまたま最後に会ったモンスターが脱走していただけで、犯罪者扱いされるの?」


「たまたま、で済む話ではない」


男の声が低くなる。


「アグニールはな、我が都市にとって重要な“兵器”だ。たかが一般モンスターと一緒にされては困る」


その言葉に、場の空気が一段階冷えた。


「故に、そんな大事な兵器と接触してしまった貴様らには、この都市に居てもらう訳には行かない」


私も、メルも、モウガンも動けない。

この都市の闇に触れてしまった事実と、それに巻き込んでしまった私のパートナーたちの命運が穏やかなものじゃ無くなることに、酷く憔悴してしまう。


私が研究所へ連れて行かなければ……いや、私と出会わなければ彼女達もきっと、こんな事に巻き込まれることはなかった。


これも全て私の責任だ。

責任も何もかもを全て私が被る。


だから願わくば、私のパートナーだけでも無事でありますように。




「連れて行け。貴様らの罪状は、都市の機密モンスターと接触した上に、危険なモンスターを市街地へ放つという──都市の“転覆罪”だ」


慈悲なく響く罪状の響きに心が折れそうになりながら、私はパトカーへと連行される。


連れて行かれた先は、警察署でも留置所でも無い。

危険なモンスターと人間とを一緒に管理し、殺し殺されが横行するという檻──“プリズマ刑務所”だった。

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