第三話「魔∪王」
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「急げ早く行くんだ秘書君!!! 」
「解ってます、でもどうやって魔界から勇者を退場させるんですか? 」
魔王と秘書はリムジンに乗って魔界の中央幹線道路を移動中、幹線道路は勇者の登場で大きく渋滞を起こしており、魔王と秘書はリムジンを浮遊する魔術で渋滞を飛び越えて進んでいた。
「私にいい考えがある!! 」
秘書がそのセリフを聞いた時に感じるのは、ヤベえフラグが立ったと言う悪寒だった。
そんなやり取りをしている二人の眼下に幹線道路の真ん中で暴れる花の勇者の姿を確認する。
「居ました魔王様!! 花の勇者です!! 」
道の真ん中で先行して防衛にあたった魔界大将軍が、ボロ雑巾の様に振り回されており。
花の勇者の叩きつけるパンチと地面を往復するバスケットボールに成り果てて、既に事切れた身体が3Dゲームのやられたキャラの如く身体がグニャグニャになっていた……
「ここにも花を植えなきゃ……」
花の勇者はスッと魔界大将軍を掴んで地面に押し込むと、ブシャっと音が鳴り……
「生けてないけど綺麗な花……」
道路に派手な血の花が咲いた。
「ひいいいい!! 」
路上の魔界の住人が慌てて車を捨てて逃げ出す。
彼等は思い出した……五十年前の魔界全土が震撼した事件。
魔界の副将バアルゼブルが、赤いマットのジャングルに盛大な血の花を咲かせた。
「染血のホワイトデー」事件である。
イケメンで知られた副将バアルゼブルが、多くの女性ファンの前で……
「この戦いの勝利をホワイトデーのお返しに、ファンみんなにプレゼントするよ!! (ハート)」
……と豪語して先代花の勇者と戦い、顎から上が爆散し、立ったまま "花" になった。
後に千年は語り継がれる悪夢として歴史に残るだろう。
「勇者!! 確認!! 」
路上で確認された花の勇者、やはり姿は貧相な赤髪の少女で、装備もひのきのぼう、かわのよろい、かわのズボン、かわのたて、うでわ、かわのくつ、である。
装備構成を見て魔王が言う。
「アレが今代の花の勇者か、ちんちくりんの少女じゃないか!! しかし……」
「本当にロイヤルストレートフラッシュだとすれば我々に対策は無い、装備の枠からしてひのきのぼう以外がロイヤルストレートフラッシュしてる可能性がある」
「どうしてそう言い切れるんですか? 」
秘書はその魔王の分析を聞いて問い返す。
「ひのきのぼうはスートに関係が無い、ロイヤルストレートフラッシュは5つの付帯効果で構成されている、先代の花の勇者がそうなんだ……副将バアルはひのきのぼうを外させて追い込んだつもりだったが、最終的にフック一発で顔がパーンした」
「うああああああ……」
魔王はリムジンから降りるとゆっくりと勇者に対する準備をする、何やらメールでのやり取りをしている。
秘書は花の勇者に目を合わせないように顔を伏せていた。
(魔王さま……何か手は有るんですよね……)
秘書はヒソヒソと魔王に聞く、魔王もメールの返信から自分の状態を確認して携帯をしまうと……
「いくぞ、君は巻き込まれないようにしてればいい」
魔王が遂に花の勇者の方に歩みを進めたのだ。
秘書は不安でいっぱいだ。
「魔王様? 本当に対策有るんですよね! そうですよね!? 」
魔界の路上の真ん中で遂に勇者と魔王が対面する。
そして紳士に会釈しながら顔を合わせて言う。
「お初にお目にかかる、私は魔王セタン……こっちは秘書のベブル君だ、君は何者だい? 」
魔王の登場に花の勇者は何も動じず、ただただ挨拶された事にだけ反応を見せる。
「名乗れと言うのね、私は花の勇者……ブロッサム」
「ブロッサム、なるほどいい名前だ……だが残念だが君にはここで退場してもらう!!! 」
ここで魔王の強気発言、一見強キャラの良くある勝利宣言だが若干演技が拙い。
秘書はもう駄目だーと言わんばかりの顔で思う。
(何してるんですか魔王様ー、何とか話し合いに持ってかないと"花"になりますよー!! )
花の勇者はやはり動じる様子が無い、そしてこちらを見て語る。
その目は正に虫でも見るような目だ。
「花を植えなきゃ……イケナイの……」
「「 は? 」」
花の勇者の発言に魔王も秘書もちんぷんかんぷんだ。
同時に首をかしげて、勇者の語りを聞く。
「チュートリアルオークさんを倒して思ったの……世の中諸行無常でね……」
「良い人も悪い人も等しく死ぬ運命なの……だから私が……」
「みんな沙羅双樹の"花"にしてあげるの……フフフフフ……」
この発言に魔王も秘書も凍りついた。
(…………)
「「 闇 落 ち し て る ー !! 」」
ワナワナと震える秘書、もはやこの勇者は思想が真っ黒過ぎてどうしようも無い。
魔王が突っ込む。
「そこいらのモンスターや魔族よりも"闇落ちした勇者"の方が百倍厄介じゃねーか……って!!」
揺らぐ周囲の空気、慌てふためく魔王と秘書に遂に花の勇者が牙を向いて襲いかかってきたのだ。
「花になれええええ!! 」
その一撃は正に数トンのダイナマイトが爆発したかのような、何の属性も無い純粋な物理!!
魔∪王はクレーターの中心で受けきったのか、効かんなと言いたげである。
「何だって!! 魔∪王様凄い!! ……あれ? 」
魔∪王は高らかに叫び語りだす。
「花の勇者、君の攻撃は通用しない!! 何故なら今しがた……」
「「 天界に申請していた勇者側の…… "負けイベント" が認可されたのだ!! 」」
負けイベント、それは勇者が序盤に強敵に遭遇し敗北すると言う一大イベント、本来なら仲間が庇って逃がしてくれたり、ヒロインが捕らえられたりする強制イベントだ。
そして円滑にストーリーが進む様に敵キャラ側には無限のHPが与えられたりして、勇者側には勝ちがない様に仕組まれている。
天界に申告が通ったので一度だけこの花の勇者に適応されたのである。
「つまり……貴様は私に一切のダメージが与えられないのだ!! 」
魔∪王はここで自身の何かが変わった事に気付く。
「アレ? ノーダメージのはずなのに……なんか変だ……」
秘書がとんでも無い事実に気付く。
「魔∪王様、まさか……これ」
秘書の指摘で魔∪王もガクガクブルブルと震え出す。
「「 ぎゃあああああ!! 負けイベントで受け流した花の勇者の攻撃したダメージが!! 」」
「「 私の"プロフィール欄"を攻撃したあああああー!! ( 魔王→魔∪王 ) 」」




