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花の勇者  作者: 丸ーニィ
2/3

第二話「魔王」

 

******


「報告します! 花の勇者!! 五十年ぶりに存在を確認しました!! 」



やけに目立つ伝令兵が玉座の魔王に進言する。

魔王は無精髭を指で掻きながら、業務報告の書類データを確認をしていた。

魔王は言う。


「えー困るんだよね、今さら勇者出現報告とか人里のクマじゃないんだから……」

「急に古いチュートリアル事業者から報告があっても、こちとら人間界に出払うスケジュールが作れ無いんだよ」


「ええー、そんな事言われましても以前の魔王軍侵攻時代の役目ですし、私もこんな報告業務を五十年ぶりにする為に何駅も乗り継いでやって来たんですよ、交通費出ないなら帰ります」


伝令兵も困った顔で返答した。

彼は領収書を提出し、後日振り込んで貰えるように手配すると足早に去っていった。


魔王の困った姿を見ながら秘書が質問をする。


「勇者報告なんて、こうまで遠征してする事ですか? 」

「花の勇者でしたっけ? 私は新参なので軍時代の魔王様については知りませんが……どんな相手なのですか? 」


魔王がその秘書の質問を受けて担々と説明する。


「魔界の戦争事業が五十年前に頓挫したのは知ってるよね」


「はい、確か侵略中に人間の大国が滅亡したりして魔界でも流通していた通貨が暴落」

「魔界史上最大の経済危機が始まり、人間界侵攻事業のコストが大幅に増えて、現地での軍隊の維持が難しくなったと言う話ですね」


魔王が資料を持って言う。


「更に現地での兵士モンスターの逃亡や近隣市町村の略奪事件が起こり、事業を畳もうとする我々とすればこれらを倒す勇者は正に様々で、魔界に帰還を拒むモンスターや魔界兵士を処分するのに有効活用したわけだ」


「これに天界も関与が有り、勇者の使う魔法や技術、武器防具に至るまで強い加護がもたらされ……」

「人間界を救うと言う名目で、我々魔王軍の事業縮小計画に多いに手を貸してくれたと言う訳……」


秘書はなるほどと相打ちながら聞いている。

魔王は続けて言う。


「で、ここで現れたのが……花の勇者だ」

「当時魔王軍の中では撤退派と侵攻征服派と別れ、互いに意見が割れていてな」

「侵攻派は沢山の魔界の将軍を地上に送って撤退派を揺さぶろうと画策したのだが……」



「彼等は、皆………地面を彩る "血の花" になって息絶え、そのおぞましい様子は魔界全土を震撼させた!! 」


秘書は心霊現象の恐怖話を聞いた様な引きつった顔で聞き、魔王に尋ねた。


「何ですかソレ……その血の、じゃなくて花の勇者はとんでもなく強いんですか……」


魔王は担々とその時の様子を語る。


「取り敢えず天界に"問い合わせ"たんだが、そのようなイベント戦闘は承認されてないとの事……つまり実力で成し遂げた事になる」

「そしてその様なことの出来る装備も技術も認可されてないが……しかし」



「しかし? 」


魔王は資料を持ってくる、何やら武器防具のガイドブックのようだ。


「この資料の武器防具の"付帯効果"と言うモノがあるだろう、これは装備の補助でコレクターに対するハクスラ要素でもある部分だ」

「遥か昔に神々がオマケ要素で作ったモノで、せいぜい数パーセントのステータスの向上が見込まれたり、毒などの"バットステータス付与"と"状態異常事態の敵にダメージ増加"を組み合わせて使う様な、クレバー(抜け目のない仕様)要素の醍醐味程度だったが……」


「何故か、付帯効果に"トランプのスート"が出てる武器があったんだ、スート単体に特に効果はない」


秘書がここで首を傾げる。


「そんな武器持ってて意味有るのですか? とっとと捨てたり売ったりしません? ……揃えて意味有るのですか? 」


魔王はこう返した。


「あったんだよ……その"意味"が花の勇者なんだ」


秘書は顔が引きつってワナワナと顔が恐怖にまみれてくる、花の勇者の意味が予想出来て来たのである。


「つまり、アレですか……」

「その意味のない付帯効果である "トランプのスート" の付いた武器を集めて……」


「「 ロ イ ヤ ル ス ト レ ー ト フ ラ ッ シ ュ 」」


「……出来ちゃったんですか……」


秘書が大汗をかいて魔王に尋ねた。


「出来たからこそ、その戦果が予想されるのだ」


「そして侵攻派の先導者である当時の魔王軍副将 バアルゼブル が花の勇者を打倒するため……」

「人間界の四千人は収容出来る大型興行施設で初のタイトルマッチを行い、観戦チケットは飛ぶように売れ……賭博での予想比率は花の勇者と副将で一対九と高レートで……おっとここは聞かなかった事に」


「はい良いですよ魔王様(コイツ花の勇者に賭けやがったな)」


秘書の呆れ顔を見ながら魔王は当時の結果を告げる。


「花の勇者の三ラウンドTKO勝ちと言う結果になった」


結果に秘書がドン引きで尋ねる。


「いや、強すぎません? どんな付帯効果でそんなバケモノになるんですか!! 」


魔王がその時に調べた付帯効果の全容を語る。


「天界に問い合わせしたら……ロイヤルストレートフラッシュの効果は "一体敵を倒すだけで知力以外全ての能力が1上がる" んだってー! 馬鹿じゃ無いかなー!! 」

「花の勇者のステータスが一割の実力と九割の付帯効果で構成されてて更に永続な訳だ、こんなん勝てる訳ねーだろ!! 」


秘書も一緒に笑い飛ばして言う。


「本当ですよー、1レベルでステータス1上がるのが常識なのに、いっぱい雑魚狩って必死で1上げた頃には世界最強になってるじゃないですか、真面目にやってるのがアホらしいですね」


魔王と秘書が花の勇者談義で笑い飛ばしているその時……。

先程領収書を提出した伝令兵が帰ってきた。


「報告します!! 花の勇者が魔界にINインしましたー!! 」


魔王と秘書の時間が止まる………そして二人の悲鳴が木霊した。


「ぎゃああああああああああああ!!! 」

「うわああああああああああああ!!! 」


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