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1話目



------- プロローグ -------




『はい、もしもし』


「暇だわ、タジロウ!

 あんた何か歌、歌いなさい!」


『え?無理ですよ、先生。

 ココ駅のホームなんですよ?

 人いっぱいいるんですから』


「あんた駅で何やってんのよ?」


『新幹線、待ってるんですよ』


「は?新幹線?あんたごときが、

 新幹線?

 在来線使いなさい!」


『いいでしょ別に。急ぎの仕事なんですから』


「急ぎって何よ?

 あたしよりも大事な仕事があんの?」


『いや、そりゃ先生が一番ですよ。

 ですけど僕にも色々とありますから・・・

 それよりも先生!』


「なによ?」


『こんな電話してる暇があるんだったら執筆してくださいよ。

 締め切り近いんですから』


「やる気がないのよ」


『なに堂々とそんな事言ってるんですか』


「だからあんたが今そこで大声で歌えば、

 ちょっとはやる気が出るかもしれないから歌いなさいって言ってんの!」


『出来るわけないでしょ、そんな事』


「やんなさいよ」


『嫌ですよ』


「チッ、つまんない男ね」


『あ!だったら先生!』


「ん?」


『ネットに短編でも出してみてはどうですか?

 気分転換に』


「ネット?」


『Web小説ですよ』


「ウェブ小説?」


『インターネットに投稿できるサイトがあって、

 そこに小説を出すんですよ』


「ギャラはいくらなのよ?」


『そんなものありませんよ』


「じゃ何のためにやるのよ?」


『リアルな評価が貰えるんですよ。

 一日に何人が読んだとか、直接感想が貰えたりとか。

 先生も、たまには未知のジャンルに挑戦してみるのもいいと思いますよ。

 あくまで気分転換ですけど』


「ふ~ん・・・

 つまんないわ」


『そうですか。あ!

 先生!新幹線来たので電話切りますね。

 ちなみに【小説Webキング】ってサイトがあるので見てみてください。

 それでは先生!締め切り近いんで頑張ってください!

 失礼します!』



ブチッ



なんなのよこの男。

何で小説を書きたくないって言ってるのに、無償で小説を書かなくちゃいけないのよ。

ふざけんじゃないわよ!

あたしは、霧乃城レイ子よ!

誰もがひれ伏す、霧乃城レイ子なのよ!


・・・・・。


えっと・・・小説Webキング・・・っと、


カチッ


・・・ふ~ん。


ウェブ小説ねぇ。







------- 1話目 -------



カチッ!


送ったわよ!

投稿したわよ!

このあたしが!

誰もがひれ伏す、霧乃城レイ子が!


さぁ、読みなさいあんたたち!

思う存分、無料で楽しむがいいわ!

この霧乃城レイ子の新作をねッ!!


ん?

何よこれ?

どこを見ればいいのかしら?


電話するわ。


「・・・もしもし!タジロウ!」


『はい、何でしょう?先生』


「どこを見ればいいのよ?」


『はい、何の事でしょうか?』


「何人が読んだかわかるんでしょ!?

 それはどこを見ればいいのか聞いてんのよ!」


『え?・・・あ!先生!

 ウェブ小説を投稿したんですか!?』


「そ、そうよ・・・

 とにかく、どこを見ればいいのよ?今すぐ教えなさい!」


『あ、えっと、サイトは小説Webキングですよね?』


「そうよ、その何とかキングよ」


『えっとじゃあ、小説の一覧って項目があるのわかります?』


「あなたの小説一覧ってとこ?」


『そう、そこです!そこクリックしてください』


カチッ


「押したわよ」


『先生の投稿した小説のタイトルの下に星のマークがあって横に数字がありますよね?』


「あるわ」


『その数字が読んだ人の数です』


「壊れてるわよ」


『え?何がですか?』


「数字がゼロのままよ」


『ブラウザをリロード、あ、再読み込みしてみてください』


「リロードぐらい分かるわよ」


『あ、すみません』


カチッ


「壊れてるわよ」


『え?』


「数字がゼロのままよ」


『あ、そんなにすぐには誰も見ませんよ』


「なんでよ?」


『先生、匿名で出してますよね?』


「当たり前でしょ!

 あたしはリアルな世間の声が知りたいのよ」


『だったら仕方ないですよ。

 新人の作品は読まれにくいですから』


「そうなの?それを早く言いなさいよ。

 で、星の横の黒丸は何なのよ?」


『星の隣の黒い丸がコメントの数です』


「タジロウ、あんた詳しいわね」


『あ、昔ちょっとやってたことがありまして・・・』


「あ、そう。

 で、いつコメントが付くのよ?」


『すぐには無理ですよ。

 明日まで待ってみてください』


「ふ~ん。

 つまんないわねぇ」


『というか、先生!

 何て名前で投稿してるんですか?

 ボク読んでみたいんですけど!』


「ダメよ」


『何でですか?』


「あんたに言うとバレるじゃない」


『え?誰にも言いませんよ先生。

 ボクを信用してください』


「タジロウ、あんた本当に誰にも言わないって誓える?」


『え?』


「信じていいの?タジロウ」


『・・・えっと、編集長には・・・』


「ほら!」


『あ!いや!でも先生!』


「ダメよ」


そう!

あたしは世間一般の本当の声が知りたいのよ!

お世辞だらけの反応にはもう懲り懲りよ!

あたしは霧乃城レイ子!

誰もがひれ伏す、霧乃城レイ子なのよ!

オーホッホッホッ!


「切るわ、タジロウ」


『あ、先生、』


ブチッ


フフ・・・

明日が楽しみだわ。

この星の数字が莫大な数になっているのは紛れもない事実!

だってあたしは霧乃城レイ子なのだからッ!








------- 翌日 -------



『はい、もしもし』


「タジロウ」


『はい、何でしょう先生?』


「やっぱり壊れてるわよ」


『何がですか?』


「星の横の数字がゼロのままなのよ」


『ネットの投稿小説ですか?

 もうちょっと待ってみてくださいよ』


「待てないわよ」


『だったら匿名の名前か小説のタイトルを教えてください。

 ボク読みますから。感想も書きます』


「ダメよ」


『というか先生!

 執筆は進んでるんですか?

 締め切り近いんですよ?間に合うんですか?』


「やってるわよ。

 男があんまりヒステリックになるんじゃないわよ。

 みっともない」


『それじゃ、途中でもいいんで送ってください。

 チェックしますんで。

 お願いしますよ!先生!』


「分かったわよ!

 うるさいわね!

 もう切るわ、タジロウ」


『あ、先生、』


ブチッ



分かってるわよ。

べらぼうに書いてるわよ!

2話目をね!

これで星の数字を爆上げさせるわよ!

なにせあたしは霧乃城レイ子なのよ!

だれもがひれ伏す霧乃城レイ子なのよッ!!





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