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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

百合になれない

作者: 若丸



今日、一緒に帰ろう



授業が終わり部活へ行く前に友達の綾からそう言われ、頷きながらお互い別の部活へ向かった。



決して好きとは言えない部活の間も、ずっと綾と一緒に帰ることを考えていると苦ではない。

私の頭の中をずっと綾が占めていて、そわそわしてしまう。


前は普通の友達だった綾をこんな風に思うことはなかったのに………。










――数週間前――



「瑞稀、ちょっといい?」

「ん?わかった」



他のクラスの友達である綾に呼ばれ、廊下に出る。

こっちこっちと手招きされ、人気のない女子更衣室へ入るとドアから遠いところに綾がいた。



「あのさ、急なんだけどね、あたし瑞稀が好きみたい…」

「えっ……」



は?綾は何を言ってるんだ??

私と綾は女同士で、友達で、同い年でとりあえず同じ性別だし…。


同じようなことが頭の中をぐるぐると巡ってくる。

最終的に嬉しいという気持ちよりも、なんで?という大きすぎる疑問が頭の中に居座った。



「ねぇ、聞いてる?好きなの」

「は、はい。私もすきだよ?」


「ほんと!?じゃー付き合お」


脳みその動きが停止している状態でオウム返しした。

まぁ私もお友達として好きだから一緒ってこと???

そう言うと、抱き着いてきて唇と唇をくっつけてきた。



初めてのキス。



女の子とキスしちゃった…。

あれ?これっていいんだっけ??キスってしていいんだっけ?



目の前の綾は目を瞑り、ふにふにとマシュマロの食感を味わうみたいに私の下唇を優しく噛んでくる。



脳みそがやっと現状を受け入れようとしたとき、初めてのキスが終わっていた。



「キスしちゃったね…」

「ぅん……」






――――――――――





なんやかんや流された感じはあるけど、いつの間にか綾へと好意を向け始めていた私は綾と付き合っている。




なにかで観た気がするけど「思春期の中学生は下心で考える」なんてうまくいったものだ。


今では2人でいられるときには私からキスをしてしまうほどだ。



自転車通学の私は自転車を押しながら、綾の家まで送り届ける。

綾の家の前に着き他愛もない話をして、別れ際にキスをする。


我ながら不思議と現状を受け入れている。

同性だからなんて葛藤は脳みその遥か彼方へ飛んでしまったようだ。





あるときは短い休み時間の終わりかけに軽くキスをする。

またあるときは人気の少ない階段下で長めにキスをする……。


私の理性はどこへいってしまったのだろう?

綾をみると名ばかりの理性なんてものは足早に脳から消えていってしまう。




「瑞稀さ、キス好きすぎじゃない?」

「んっ、そうかも…」



そんな会話をはさみながらも、チュッチュッとキスを続ける。

今では綾が好きなのか、キスが好きなのか分からない状態だ。



「ちょっと、っ、もうおわりね?」

「んぅ、わかった」



軽く始めたはずのキスはいつの間にか深いものになっていたようで、舌を絡めていなくても上がっていく息でお互いの限界が迫っていることはわかった。


綾の零す息に下半身のざわつきを感じて、最後の一口の気分で唇の先を啄むように噛んだ。



「っ、はぁ………。はい、おしまい」

「はぁっ…。綾、すき」


「………あたしも」













――――――――――


あれから1年が経った。



私の隣に、綾はいない。



気づいたら同じクラスの男子と付き合っていた。

告白されたら段々と気になっていき、付き合ったそうだ。

その男は綾と付き合う前から私とも仲が良かった。


付き合い始めたとき2人そろって幸せそうに報告をしてきた。


あんなに私とキスをしたのに、この男ともそういった行為をするのかと思うと気持ちが悪くなった。



私の好意は異性に向けられるものだと思っていたのに、私の愛はいつの間にか異性、同性に関係なく向けてしまうものに変貌してしまったのにそれを捻じ曲げ、私じゃない男を愛している綾を許せない。


失ってから気が付くなんて嫌だった。

私はちゃんと綾が好きだったことに気付いてしまった。



結局女の私が好きだったわけではなく、思春期の心で女の私を好きになったと錯覚してしまったのだろう。


もう私は女性を好きになりたくない。



.

乱文でお目汚し失礼します。

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