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いゝよ  作者: あ行
8/13

8怪異

「だぁ、か、らっ!!知らないって!こんな物。」

「あ゙ぁ?俺だって知らねぇよ。」

「あぁ、どうしよ。」

 取引相手の忘れ物を偶然見つけ、どうしようかと途方に暮れていた。

「だいたいこれ、何だぁ?袋じゃなくて、足袋に(なん)か入れてやがる。」

 汚物を触る様に、忘れ物をつまむ。

「そう云う趣味だろ。もういいじゃんほっとこう。僕らはこんな物知らない。」

 ぐおぉおぉ……!

 地響き。音が心臓に刺さる。遠くで黒い物体が揺らめいていた。うつぼの様だ。

「うぉ……!何だ?」

「怪異じゃあ……!!」

 今にでも引き剥がれそうな笑み。ぎらりと八重齒が光る。

 笑みと脳が反応する間に、怪異の方へ走って行ってしまった。

「……、」

 盛大に前髪と着物の袖が舞う。呆れた顔をする。

「最初見た神無の笑顔があれかよ。」

 鼻からため息を吐く。

 ん、手になんかが。

「えぇ……!なんでっ、なんで客の忘れ物が?!はぁ?!あいつ……!」

 足袋を握りしめる。

――――――――

「ははっ!!」

 宙を舞う。提灯照って怪異と共に、はしゃいでいる。

「楽しいなぁ!!」

 体が下へ落ちる。体勢を直し、怪物の動体に乗る。下駄はそのままだが、踵が浮く。

 べちゃ、

 粘っこい。

「…………。」

 そんな事お構いなしに、上へ上へと走っていく。

「…………すっ、」

 肺に空気を入れる。両腕を思いっきりあげ、刺す。

 ぐおぉおおおぉ!!

「はっはは!痛いかぁ?!」

 謎の液体が顔にかかる。魚を捌くみたく、腹を切ってゆく。すると切り傷から財宝が次々と出てきた。

 カタッ

 地面に足つく。終わった。

「骨のない奴だ。」

 ワイワイ

「これで借金を返せるぞ!!」

「それは俺のもんだ!返せ!!」

「ああ?!最初は――」

 野次馬どもは金や宝を手にして、喜んでいる。

「…………、」

 見向きもせず、人外の元へ戻る。

「良いのか。神無がやったんだろ?あの宝は神無の物だ。」

「良いんだ。あの怪異は弱い。弱いから良い代物ではない。一錢にもならん。」 

 人外はふっと失笑する。

「野次馬はそれを知らなくて、(たか)っているのか。」

「あぁ、そうだ。こっちの方が実物だろう?」

「ふはっ!そうだな。」

 二人は歩く。まるで高校生の放課後みたいだ。

「ん、足袋はどうした。客のやつだろう。」

「捨てた。」

 何の変哲もなく云う。

「……」

 一瞬止まる。

「んははっ、ははっ!そうかそうか。捨てたのか。その方がいい。」

「…………。うん。」

――ところで何だその、顔に付いている黒い物は。

――知らん。怪異から出てきた。

――その、言いにくいんだけと、臭うぞ。少し。

――ん、そうか。

――取れよ。

――俺は臭わないからいい。

――僕が困るんだ。

――ちょっ、あぁ!もう!触るな!!

――うわぁ……何これ……。

――あんなぁ、勝手に触っといて何だそれは!

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