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いゝよ  作者: あ行
4/13

4旅館

「お前らも呑めよ。」

「はい。有り難く頂きます。」

 今日は取引が終わり、旅館で泊まっている。食夜とも一緒だ。俺は食夜に雇われている。

「取引もよくいったみたいで良かったよ。」

「恐縮です。」

 こいつとはあまり関わりたくない。

「おい、使い。やってこい。」

「はい。」

 そう言って部屋から出ていった。

「……いたのか、」

「さぁさ、呑んでください。今宵は宴ですよ。」

 ぐいぐいと酒を勧められる。

「あぁ、どうも。」

「んははっ!いい気分じゃ。」

 食夜が浮かれている。

「おい、何処に行く。」

 鋭い目つきの奴が腕を引っ張る。痛い。

「厠。」

「あ゙ぁ?俺も行く。」

「付いてくんな。タコ野郎。」

「あぁ?」

 いつもの喧嘩を始める。

「おい、」

 二人とも反応する。

「飯が不味くなる。やめろ。他所でやれ。」

「すみません。」

――――――――

「何でくるんだ。神無(かんな)。」

「こっちの台詞だ。」

 回廊を歩く。月明かりが眩しい。

「おい。」

「なんだ。」

 お互い見つめ合う。

「厠の場所……知ってるか。」

「知らん。」

「はぁ?知らんくて付いてきたんか。馬鹿。」

 胸ぐらを掴まれる。踵が一寸浮く。

「お前……いい加減にしろよ。」

 両者睨み合う。

「ぅわ……!!」

 押し倒された。尻餅をつく。

「…………もう、」

 神無はどっかに行ってしまった。

――――――――

「あら、お兄さん。つれない。もっと遊びましょ。」

 女がぐいぐい勧めてくる。

「大丈夫です。」

「ほら、呑んで。」

「もう入りません。」

「じゃあ、」

 手のラインに沿って焦らされる。背筋が凍る。

「僕、想い人、いるので。」

 思わず部屋から出ていった。

「……。」

――――――――――

 敷布団を敷き、襖隣りには人外、窓際には神無がいる。

「…………。」

 なんでこんな奴と一緒なんだ。

「寝れるか。」

「煩い。」

 天井を見る。

「うわ!何でここにいるんだ、やめろ!」

 神無が布団に入ってきた。

「……静かに。」

「はぁ?静かにっむぐ!」

 神無は何か呪文を唱えている。着物が頬に当たる。

 襖が開く。

「……!」

 食夜の使いだ。何しにきたんだ。

「……ぇ、」

 隠すように注射を持っていた。

 使いがこちらを向く。目が合っている。何で、なんで

「…………。」

 使いは部屋から出ていった。

「ぇ、あれ、どういうことなん……。」

「俺たちの血を取ろうとしてるんだ。」

 あぐらをかき、襖の方を見る。

「ち……?」

「あぁ、今血が高騰しているらしい。それを売って大儲けって訳だ。食夜が使いに命令したのだろう。」

 神無が頭に人差し指を指す。

「あいつらほんと頭イカれてやがる。」

「あぁ、ほんま、ねじ外れてるな。」

「それと、」

 指をいじる。

「ありがとう、な。」

「お前のためじゃない。俺のためだ。」

 くしゃっと言う。

――――――――

 眠れない。まだ心臓がバクバク鳴ってる。煩い。

 仕方ない。

「…………ん、何だ。まだ眠れてないのか。」

「…………。」

「そろそろ慣れろ。俺の布団にお前が入る場所なんてないぞ。」

「……、」

「いだだだ!やめろ。なら、隣に敷いたらどうだ?」

「そうする。」

――

「眩しい。」

「諦めろ。窓際なんだから。」

「うーん、」

「早く寝ろ。」

 指を絡める。

「うん……、そうす」

「おいおい、もう寝たのか?」

「…………、」

「ははは、変な奴。」

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