11あっためて
「ゔー。さむ。」
布団の中で縮こまっている。温泉に浸かっているようで、あったかい。
「何で仕事なんかあるんやろ。出たくない。あ゙ぁ、お布団と結婚したいわ。」
人外の音が部屋に渡る。
「けっこん…………」
時が止まる。
「こんな事考えてんと、はよ支度しな。」
――――――――――――
「あれ、」
目先に娘がいる。
どうしよう。前みたいになったらどうしようきらわれていてうっとうしいとおもわれていたら、
思考が固まる。
「あ、」
目があった。
その可愛い眼に心臓が跳ね上がる。
「こんには。」
繊細に笑いかけた。
「こんばんは。」
たおやかに笑いかけられた。
「あ、こんばんは。でしたね。」
「んー、この時間って分からないね。夕方は。」
隣で照れくさそうに笑っている。
「ふふ、そうですね。」
空を向く。白く濁っていた。
「ふぅー、」
白い息を吐く。霧のようだ。
「近頃、どんどん寒くなってきてますね。」
「そうだね。布団が恋しいよ。」
横どなりで貴方と時を過ごす。
「手の感覚がありません……、」
「ん、そうなの、大丈」
上目で見つめられる。猫のようにくりっとした目だ。
冷たい風が頬を突く。
「その、あの、」
「?」
しどろもどろに娘が話す。
「あっためて」
赤らんだ手先を俺に向ける。
「ぇ、あっため」
手を握るってことか?握って良いの?俺なんかが触れても良いの、
「…………」
目が合う。
娘は白い吐息を吐きながら、黙っている。
「ぃい、」
承諾してもいいのか。娘には俺じゃ無い想い人がいるだろう。なんで。なんで、
娘の手に近付く。
「よ。」
触れた。
思わせぶらないでよ。
「ごめんね。僕も冷たいんだ。」
「いいえ。ありがとうございます。ふふっ。」
冷たい手が重なる。冷たいのに生きている。
「あ、僕、用事があるんだった。もう行くね。」
思いを離れる。
「はい。お気をつけて。」
相手の手が離れていく。
行ってしまった。
――――――――――
「………………。」
今日は、何であんな事してきたんだろう。もしかして、いや、それは無いか。ただの気まぐれだろう。しかし、名残惜しいと何処かのこゝろで思ってしまう。
「ほんま、何でなん……。」
振り回される。ぐるぐるする。こんな気持ちになるなら、諦めようかな。
――あっためて
けど、やっぱり好きだ。




