10本番
「避けろ!!」
「ぐわっ……!」
ビッ
何とか急所を避けられた。
「おやおや、大丈夫ですか。」
痛い。こんな仕事もうやめたい。
――――――――――――
「今回は、大型の討伐です。午前壱時に出現する予定です。場所は浮遊街。ご存じのとおり、店が並ぶ繁華街、人が沢山いらっしゃるので――」
面をした奴が流暢に話をしている。着物を着ているのに、黒い手袋をしていた。肌が見えない。
「おい、大型なのにこの参人でやるのか。」
神無が入り込む。
「えぇ。もちろん。」
「無理だろ。大型は最低でも、質、捌人はいるぞ。あいつらみたいに、頭いかれてんのか。敬語野郎。」
敬語野郎の時が止まる。
「……。貴方ぐらいですよ。僕に歯向かうのは。」
面の下でやれやれとため息を吐く。
「今回は、参人でもいけるでしょう。新人さんもいらっしゃるようですが、」
面がこちらを向く。
「貴方と僕。長期に渡り、この仕事をしているので、」
「十分ってわけか。」
「えぇ。」
何の話をしているか頓珍漢だ。
「??」
「ふふっ、分からなくて当然ですよ。」
「あぁ、初めてだもんな。」
人外が何かの言葉に引っ掛かる。
「ねぇ?"新人"さん。」
面をしているのに、威圧感がドロドロとしている。クジャクヤママユの蝶みたいな耳飾りしやがって。
「あ、あぁ。」
――――――――――
キーワーーワー!!!
「いだっ……。」
金切り声だ。耳が痛い。
「さぁ、討伐の時間で」
「行くぞ、早く来い。」
神無が先走ってしまう。
「おやおや。定番の決め台詞をしたかったのですが……」
そう言って、敬語も先行ってしまう。
「ぁ、待って。」
置いていかれる。世界で一番嫌な事。あの場面が蘇る。
「…………っ、」
怪異に近付く。トカゲの様な怪異だ。
「ははっ!!こっちだ!」
樂しそうだ。豪快に口をかっぴらいて笑っている。
「良い誘導です。その内に僕は……、」
どうしよう。何をすれば良いんだ。また、一人ぼっちだ。
キーーーーーーン!!
「…………痛!」
耳から血が出る。さっきより、間近に居るので脳にも直接きた。
「あ、」
「か、神無っ!!」
神無がこちらに気付く。自分の存在を知ってくれた。
「ほらっ、よっ!!」
「うわっ!」
体が宙に浮く。着物が舞う。
赤と白のちょうちんが、店を飾っている。
「おい、馬鹿!!」
「ははっ!!」
神無はまだ地面にいて、太陽みたいに笑って
「う、あぁあああ!!」
横から、ゆっくり怪異の尻尾がこっちに来ている。
「はははっ!!その面、良いなぁ!」
い、いつの間に?!
「新人さんを遊ぶのはそれくらいにしなさい。」
敬語もくる。
「ぇ、え、」
何でここに。尻尾に当たってしまう!
「いくぞ。」
「えぇ。」
「何が、」
「「せーの!!」」
くぉおおおお!!
「ふぅ。これで終わりだ。」
「そうですね。一件落着……」
辺りを見回す。耳飾りが動く。
「あれ、新人さんは?」
隣を見る。馬鹿な奴が居なくなっていた。
「そこに居たら駄目だ!!」
「ぇ、」
視界が暗くなった。
「危なかった……。おい、気をつけろよ。」
「あれ、神無。」
神無の頬に擦れ傷。
「ぎりぎりでお前を受け止められたんだ。」
袖を垂らしながら、体を起こす。
「だ、か、ら。俺はお前の命の恩人だ。鶴の恩返しみたいに、何か褒美が欲しいなぁ。」
「神無!お前にそう言う所があるから、僕が素直にお礼出来ないんだよ!」
眉間にしわを寄せる。
「あ゙ぁ?今頃、俺が助けなかったら、お前は生きていなかった。」
「知らない。僕は一人でできた。」
二人ががみがみ言い合っている内に、後ろから敬語が来る。
「おやおや。これですか、名物の喧嘩は。」
「あ゙ぁ?」「はぁ?」
二人同時に敬語を睨む。
「だいたい、敬語野郎だって知っていただろう?こいつが、下敷きにされるって。」
「えぇ。」
平坦と述べる。
「じゃあ、何故」
「どうせ、誰かは死ぬんですよ。なら、助ける必要なんてない。」
「……神無!」
神無が敬語に歩む。嫌な予感がする。
「お前なぁ、じゃあ、自分だって死にそうになった時、誰も助けてくれなかったら、どう思う?!」
「ふふっ、貴方って結構、人情深い。優しいお方ですね。」
相手の胸ぐらを掴む。
「質問に答えろ。その面、剥いでやるぞ。ほら吹きが。」
「神無、もういいよ。行こう。」
「新人さんは分かっていたはずですよ。」
分かっていた……?何が。何がなんだ。
「うわっ……、」
「もう、良いよ。」




