◇第3節◇
エドガの案内で使用人たちを引き連れて海へ向かう。
ほどなく到着した。
見渡せばいちめんの砂浜。
しかしあたりはひっそりと静まり返って、太陽で熱せられた砂浜に果てしない波の音だけがさわさわ繰り返すのみ。浜には廃船や破れた網などが無造作に放置されていた。
「なんともしょぼい浜辺だな」
「そうですね」
とお付きのメイド、エリザベスも同様の感想。
「だが砂浜はいい」
白い砂、青い海、真夏の太陽!
使用人たちとひと泳ぎし、疲れた俺はビーチで休んでいた。修繕係のトムに特急で作らせ馬車に積んできた、帆布を貼った折畳式寝椅子は思いのほか快適だった。これもトムの手による開閉式大日除傘をつきたてた下にそれを置き、ゴロゴロして、暑くなったらまた海へと――次の日も、その次の日も、日がな繰り返した。
「ああ非生産的だな……良い意味で」
「まことに、さようですねえ……」
ヨハンも俺と一緒にすっかり自堕落になっていた。
俺の隣ではエリザベスが、
「何もせずこんなにダラけるのは、はたして良いことなのでしょうか~」
とダラけきって力の抜けた声で言う。
「いいんだよ。避暑に来たんだから。休暇だと思って一所懸命ダラけておけ」
などと会話しているところへ、地元のことを探らせていたボブが戻った。ただダラけるのもあまりに無為だと思ったので、何か俺にできることはないかと考え続けていたのであるが。
椅子に寝そべりながら、報告を聞く。
「なんでもこのあたりはもともと漁師町で、最近じゃ各地から安くてうまい食材が手に入るので漁もあまりしなくなったようです」
「この数年、ランダッシュ王が商会の利権を幅広くお許しになったおかげで流通が急速に発展したからな。ではここの連中は何をして暮らしてるんだ?」
「野菜を作ったりとか」
「自給自足というわけか」
「組合をつくって余ったヤサイを首都アローラに卸したり、自分らの足で運んで行って売ったりして生計を立てているようです」
「漁は廃業して今は農民、というわけか」
「日当たりだけはよいので野菜は育つでしょう」
「しかしそれだけでは心許ないだろう。これだけの観光資源があるのに、もったいないことだ」
そんな俺の表情の変化にエリザベスが気づいて、
「シエール様が何か考えついた時のお顔になってます」
「決めた!」
「何をです?」
ヨハンが思い切り嫌そうな顔をした。
「フォーレライ家の名にかけてここをリゾート開発するぞ!」
「何をするですって?」
「まずは浜の清掃だ。壊れた船とか漁網は皆で撤去! それから海の家だ」
「海に家を建てるんですか?」
「浜辺に建てるんだ」
「それなら浜の家では」
「下らないツッコミをするな」
「その家に住むんですか? 海が時化たら流されますよ?」
「いや、住まない」
「とんでもない。シエール様に謝って頂くようなことでは……」
「謝っているのではない! 馬鹿なのかお前は」
今のはわざとに違いない。そんなヨハンに一瞥をくれておいてから、
「焼きそばやかき氷……はないのだったな。せめて程よく冷えた飲み物でもあれば……」