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導入

 バルトゥーの屋敷から帰還して数日が経った。

 フィオ達三人は宿代かわりに店の手伝いをしながら新しい魔法を覚えたり技能に磨きをかけたりと己を鍛えて日々を過ごしていた。

 そんなある日の午後、そろそろ夕方という時間帯に一人の来客があった。


GM:ところでそれぞれ何してる?


ルース:俺達働いてるんだよね? それなら俺は料理かな。

 食べるのが大好きで、美味しいもの食べる為に料理も覚えたタイプ。

 その時間帯なら夕食の支度始めてるかな。


エイル:僕はフロアを担当しよう。夜の混雑に備えて店内の掃除します。


フィオ:ん〜。厨房の手伝いに参加しようかな。得意ではないけど、野菜洗ったり皮剥いたりくらいなら出来るよ。


GM:なら出迎えたのはエイルか。

 掃除をしているとカランとドアベルが鳴り、一人の男が入って来ました。

 ゆるくウェーブがかった黒髪で、前髪が長く目元が隠れています。黒縁眼鏡をかけて全体的に野暮ったい雰囲気です。ただ格好以前に薄汚れていて、ぐったりしている。長身の背中を丸めて辛そうです。

 あ、黒髪から長い耳が覗いているのでエルフと分かります。成人した若い男に見えますが、エルフなので年齢不祥。


エイル:えっ、そんな登場?

「いらっしゃいま――大丈夫ですか? とりあえず座って下さい」


???:「ああすまない。冒険者登録したいのだが、店主はどちらだろうか」


GM:カウンターに居るよ。

ルーサー「ここだ。『蒼き雷の剣亭』にようこそ、店主のルーサーだ」

 男はカウンター席に座り、手続きを始めます。二人で何か話込み始めました。


エイル:水でも持って来よう。

つ水 「どうぞ」


???「ああ、ありがとう」


ルース:ちなみに俺等は。


GM:厨房から様子は見えるから、仲間が増えたのは分かるよ。


ルース:なるほど。「フィオ、新しい仲間だってさ。後輩だよ後輩」


フィオ:チラリとカウンターを見て。「……年上じゃないかあれ? それに俺達も入ったばかりだし、誤差だろ」


ルース「そういうんじゃなくて……」


GM:なんてやってる間にちらほらと客が入り始め、直ぐに忙しくなりいつの間にか男の姿も無くなっていた。

 混雑のピークを過ぎ、今日の仕事を終えて休もうとしていた所にルーサーからお呼びがかかった。


ルース:えっ!? 食事抜き!?


GM:仕事の合間に賄い食べたよw

 ルーサーが三人を集めたのは物置きに使われてる一室で、中には先程の黒髪のエルフが居た。

 ここまでの間に休めたのか、こざっぱりとして顔色も良くなっている。相変わらず野暮ったいが。


ルーサー「疲れてる所悪いが、仕事だ。が、その前に今日ウチの冒険者になったジョンだ」


ジョン:小さく会釈します。

「はじめまして、ジョンです。エルフで、クロスボウと妖精魔法を使います。戦闘はほとんど経験ありませんが、長く狩人をしていたので野外活動は得意です。――君はさっき会ったね。水をありがとう」


エイル:「いえ、顔色が良くなったようで良かったです。僕はエイル、ザイアの神官です」


ルース:「俺はルース。戦士だよ」


フィオ:「フィオ。魔法剣士だ。で、この人と組めって話?」後半はルーサーに顔を向けて。


ルーサー「まぁ、そうだ。ちょっと気になる事があってなぁ……。ここから北に一日掛けた所に森があるんだか、その付近で蛮族の遭遇報告が妙に多いんだ。遭遇ポイントは広く、この森が中心とは言い切れない。そう見ようと思えば見れる、という程度でな、杞憂で終わる可能性も高いんだか……」

 微妙に歯切れの悪いルーサー。


フィオ:「ん? ひょっとして依頼人はルーサーさん?」


ルーサー「ああ、俺が依頼人だよ。そんな訳で、その森を調査してくれ。何も無かったらそれでもいい、報酬はきちんと出す。報酬は一人500ガメルだ」


フィオ:「ちょっと安くない?」


ルーサー「あくまで念の為、なんでな。それにこの森はそんなに危険な獣も居ない比較的安全な森だし。まあ安いってのは同感だ、だから現物支給する」


GM:そう言ってルーサーは棚から幾つかの物を取り出しました。


・四人用テント(中古品)

・調理道具セット(中古品)

・保存食×四人分(賞味期限間近)


ルース:「在庫処分じゃねーか!」


フィオ:「あー、だから物置き部屋に。」


エイル:ルーサーさん……。


ジョン:反応に困ってます。


GM:まあ中古っつても丁寧に使われてたから状態は良いぞ。保存食も期間内に食べ切れば何も問題無いし。総額420ガメルだから報酬実質920ガメルだ。

 ぶっちゃけ、遠征シナリオ書いてみたものの、後から「これテントとか野外調理器具必要じゃん」て気が付いて追加した物なんで気にせず受け取って。


フィオ:……俺達の所持金全部足せば揃えられなくもないよ?


GM:そこは遊びの中でまで資金繰りに汲々したくなかったのと、冒険者の店なら引退した冒険者の残した物やまとめ買いで安く購入したものの半端に余った食品とかあるだろうし、無理する必要もないかな、と。

 それに今回の依頼はルーサー個人の気掛かり解消が目的みたいなものなんで。


フィオ:ふむ。


ルース:行きと帰りに一日ずつ。調査自体はどれくらい掛かるの?


ルーサー「この範囲なら一日あれば見て回れるだろ。もし何かの痕跡を見つけて、それが調査範囲の外に続くようなら一旦帰ってくれ。この範囲より奥はお前達には厳しい」


エイル:「無理はしなくていいって事ですね。了解です」


ルーサー「もし手に負えないような何かが出て来た時は、やっぱり戻って来い。調査途中で構わん」


フィオ:「ああ、要するに本格的な調査が必要かどうかの下調べみたいなものか」


ルーサー「そういう事だ。他に質問はあるか?」


ルース:ノ「はい。この依頼って、ジョンさんはどう関係してるの?」


ジョン:「? 私?」


ルーサー「ああ。こいつはな、金欠で直ぐ出来る仕事があるならやらせて欲しいってんで呼んだんだ。依頼そのものとは関係無いぞ」


ルース:「あれ、そうなんだ? てっきりジョンさん絡みの依頼かと」


フィオ:思わせぶりな導入しといて関係無しかい。


ジョン:なんかすまん。


ルーサー「依頼とは関係無いが――ジョン、仮にも命を預け合うんだ、顔くらいちゃんと見せろ」


三人「?」


ジョン:「そう、ですね……分かりました」


 そう言ってジョンは眼鏡を外し、髪に手を掛けるとズルリと黒髪が取れました。

 そうして出て来たのは金髪碧眼の中性的な美しい男性。モサ眼鏡の面影は何処にもありません。

※エルフなら男らしいイケメンじゃなくて美女も真っ青の線の細い美人だろ!! という作者の強い拘り。


三人「!!?」


ジョン:「その、実は私は故郷から逃げて来た身で……追われているのです。詳細は伏せますが身を隠していて……」

 詳しく話さないのは、言いたくないのではなく、思い出したくないからです。


ルーサー「事情は俺が聞いた。犯罪絡みじゃないから安心しろ。出来れば守ってやってくれ」

 と苦笑気味に言います。


ルース:「はあ……?」


エイル:おずおずと手を上げて発言します。

「あの、直ぐに出発するんですか? ジョンさんさっきまで具合が悪かったみたいですが……」


ジョン:「疲れていただけだから、一晩休めば大丈夫だよ。お気遣い有り難う」


フィオ:この二人上品だな。


エイル:そういえば言うの忘れてたけど、エイルはエルフ生まれのナイトメアです。


ルース:ここで!?


※本気でただの書き忘れです。


GM:それと、やっぱり忘れてた〈蒼き雷の剣亭〉エンブレムを。今回ちょっと使うんで全員身に着けてるって事でお願いします。


フィオ:使うんだ? へぇ。エンブレム装備。


エイル:やっぱ剣と雷マーク?


GM:じゃないか? (何も考えてない人)

 ではその後は細かい点を幾つか確認し、明日に備えて床についた。

 そして翌朝。


GM:スパッと森に着いて一泊してさあ探索だ!

 ってやってもいいけど、その間にやりたい事ある?


ルース:ノ はい! キャンプ料理皆に振る舞いたいです! せっかく料理好き設定生やしたので!


フィオ:ジョンともう少し話をしたいな。互いへの理解不足は冒険にも影響するって学習した所だし。


エイル:あー、ね。(苦笑い)


ジョン:私は多分、彼等に自分の事情を打ち明けるかどうかで悩んでる。


GM:ふむ。道中でお互いの得意分野とかある程度伝え合った感じで、夕方森の手前でキャンプシーンで。トラブルは起きないよ。


ルース:よっしゃ! んじゃ薪を集めて料理の準備するよ!

「料理は任せて!」


フィオ:「任せた」

 黙々とテントを張ろう。


エイル:テント手伝おう。


ジョン:では薪拾いに。


ルース:「〜♪ 〜♪」

 鼻歌歌いながら、食材切ったり鍋かき混ぜたり。


フィオ:楽しそうなので手は出さず、ジョンさんに話し掛けよう。

「一応聞くけど、怖いものとか、急に出て来たらパニックになっちゃうものとかある?」

 ルースという前例があるので。


ジョン:ギクリとします。


エイル:あるんだ、と心の中で思う。


ジョン:ちょっと迷って、いつかこのせいで迷惑掛けるかもだし、今のうちに言っておくべきか、と話します。

「その……私は女性が苦手なんだ」


フィオ:「女性?」


ジョン:「ああ……。女性に、その、酷い目に合わされてね。女性が恐ろしくなってしまったんだ。今回は大丈夫だろうが、今後、仕事中に失敗する可能性は否定出来ない」  暗い顔でボソボソと言います。ちなみにホラー系の酷い目。


フィオ:ホラー? ちょっと想像付かない。

「ふむ。具体的にどうなるの? 急に出て来たらパニック起こして暴れる?」


ルース:振り返ったら真後ろに居たとか?


エイル:不法侵入されたとか……?


ジョン:あんまり具体的には決めてないけど、ストーカーとかヤンデレとか想定してる。

 フィオの質問の内容にちょっと戸惑う。「暴れはしないが……。体が硬直して、動けなくなったり喋れなくなったり……」


フィオ:「対象は? 年齢関係無し? 小さい子や赤ん坊は?」


ジョン:「流石に子どもは平気だよ。そう……そうだな、子どもやお年寄りは大丈夫だった……」

 今気付いた、という顔。


フィオ:ジョンの反応には気付かずに。

「子どもと年寄りか。もっと細かく、何歳から何歳までとかある?」


ジョン:「あ、ああ」考え込んで。「すまん、自分でも良くは分からないんだ」


フィオ:「なるほど。目にするのもダメだったりする?」  街中ではどうしてたとか、部屋に女性がいる場合入れるか、どれくらい近付けるかとか細かく突っ込むよ。


ジョン:フィオの問いに困惑。なんで女性がダメなのか、とか、女性に失礼だろ、とか言われると思っていたので。


フィオ:他人のプライベートとか興味無いんで。今後の活動に関わりそうな所だけ気にするよ。


エイル:フィオはそういうキャラ。


ジョン:無関心ゆえかw 思い出し思い出し答えます。街ですれ違う時はフードを目深に被って道の端に避けてやり過ごしてた。部屋には……前例が無くて分からん。最低3mください。出来れば5mくらい。


エイル:遠い。


ルース:それ会話厳しいね。とやってる間に料理出来たよ。

「出来た! ほら皆、食べて食べて」

 干し肉を千切って乾燥玉ねぎと合わせたスープに硬いパンを浸して柔らかくし、チーズを載せてオニオングラタンスープモドキにしました。甘味はドライフルーツの入った焼き菓子です。(出発前に作ってた)


エイル:配るのを手伝おう。

「難しい話は後にしましょう。ルースの料理は美味しいですよ」


ジョン:「すっかり任せてしまったな。有り難う」


フィオ:「ん、ありがと」

 こいつ偉そうだな。自分で言うのもなんだけど。


ルース:ルースは人に手料理食べて貰うのも好きだから問題無いよ。


エイル:エイルも人の役に立つのが生き甲斐ってタイプだからね。変に遠慮せず受け取ってくれるフィオとは相性良いんだよね。


ジョン:良いパーティーだなw


ルース:その代わり難しい話は丸投げするんでよろしく。


エイル:僕も大事な決断は逃げちゃうからお願い。


フィオ:いいけどそれ、フィオがわがまま放題になるよ?


ジョン:このメンバーに混ざるの? やっていけるなかぁ……。


GM:頑張れ。

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