一通目 ~果たし状~
僕はこの世界で信じないものが3つある。
一つは眼に見えないもの。
幽霊とか超能力とか。そういった科学証明がないもの。
二つ目は青春。
ドラマやら漫画やら映画やら小説など。
フィクションだろうとノンフィクションだろうと、あんなものが実際にあることはほぼ無い。皆無だ。
現実にないから人はそうゆうものを作るのだ。
三つ目は他人。
他人の心ほど分からなく信用できないものはない。
だから僕はこの下足箱に入っている紙切れなどに決して期待などしない。
どうせ誰かの嫌がらせだか悪戯に違いない。
ドラマやら映画やらそのほかのものみたいに都合よくラブレターなどが
僕のもとに届くわけがないのだ。
そんなことは現実で起きるわけがない。
現実で起きるならみんな苦労はしない。
それに仮に僕が容姿端麗、頭脳明晰、文武両道ならまだしもだ。
そんな要素など残念ながら持ち合わせてない。
いたって普通。ノーマルだ。
普通すぎて地味なくらいだ。
そんな地味男に万が一にもラブレターなんて来るわけがないのだ。
決して自分に言い聞かせているわけじゃない。
これは事実なのだ。真理だ。
いつまでもそんなことを考えているわけにもいかない。
下足箱を開けたまま数分立ち尽くしてると注目を浴びかねない。
紙切れをポケットにしまい、靴を取り出し履く。
そして僕は帰路へ急いだ。
人気の少ない路地裏にまわったところでポケットからさっきの紙切れを取り出す。
一応確認は必要だ。万が一、いや億が一にもラブレターだったりするかもしれないだろ?
ないと思うが可能性の問題だ。
紙切れだと思っていたそれは律儀に三つ折りにされ上と下の部分を数センチ折ってあり、封筒のようになっていた。
そして表面には・・・・[果たし状]なる文字がお世辞にもきれいとは言えない、明らかにみようみまねで書いた感じの行書体で書かれていた。
・・・・・は?
今時果たし状なんてものが存在していたのか。
これはラブレターよりも希少度の高いものではないだろうか。
それでいてラブレターより希少度が高いにも関わらず、ラブレターの真逆をいくものだ。
ときめきもなにもない、どきどきがあるかもしれないがそのどきどきも逆のベクトルで発生する。
ラブレターが天国なら果たし状は地獄であるだろう。
そもそもなんで僕に果たし状なんだ?
さっきもいったが僕はいたって普通なノーマル人だ。
むしろ地味男だ。
いじめの対象にはなるだろうが、果たし状をもらう対象にはならないはずだ。
とりあえず中を確認してみるか。なにかヒントになることが書いてあるかもしれないからな。
紙切れを開いて中を読む。
"お前の態度が気に入らない。
お前を下僕にしてやる。
覚悟しておけ"
なんだこれ・・・?
読んでますます意味が分からなくなってしまった。
そこにはたった三行のか書かれていない。
普通こいゆうのって何時に何処へこい。みたいなのが書いてあるんじゃないのか?
それに態度が気に入らないから下僕にするって矛盾してないか?
どうやら今時の不良には常識というものが通用しないらしい。
それともやっぱりこれは誰かの悪戯なのかもしれない。
悪戯にしても意味が分からないけど。
まぁ悪戯に意味なんてないか。
良く分からないけど、面白かったからいいか。
深く考えてもしかたないだろう。
差出人の名前も僕に対する要求もないのだからどうしようもない。
だからこれはきっと悪戯だと判断し、僕は果たし状をポケットにしまい家へと帰った。