♪虚構の丘の未来王子アドルフさま ここに降臨!~貴賓室から世の幸せプランを模索中♪
♪君ならどっちの世界を選ぶ?今の近代社会?それともアドルフに従う?・・・♪
♪ここ120階のスイートフロアからの天空から見下ろす眼下には光の世界が鎮座している♪
-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-
嗚呼、こんな生活もそろそろ辟易だな・・・
そろそろ2光年未来に戻ろうかな。
だが・・・私がジプシーだった頃、その思いを回想する~~~~~
あれは熱い砂漠。
途方も無く続く砂の丘の稜線が幾重にも広がっている。
もう10日以上日照り続き
ラクダたちの足取りも疲れ切っている。
オアシスの水面が浮かんでは消えて行く。
それが蜃気楼なのか、はたまた幻覚か。
確認する術など今更ある筈も無い。
若気の至り。
何でこんなことになってしまったか?
そうさ、この世のエゴのせい。
そんな世界に嫌気がさして辿りついたこの砂の中
なんとも無謀な当所ないこの旅路に悪戦苦闘するも何も得るものなど無い。
ただただ砂丘が広がっているばかり。
此れまでの足跡はこの場までのラクダたちの足跡が延々と後ろに延びているのみ
これが今のオレの足跡となっている。
なんて空虚なこの世界。
なんて正直なこの砂の大地。
諦めが襲う中、方位すら見失って唯ひたすらに漂っている~~~
今夜は何処で眠りにつくのか・・・
陽の光が容赦なくこの身を焦がしてゆく---
貴賓室でシャンパンでも空けて浮かれていればよかった。
交響曲モルダウに身を包んで居ればよかった。
ロシアの大河の流れに渦巻かれていたかった♪♪♪
カラヤンの指揮棒の先に流れるように連れ去られていたかった・・・
そんな平穏の暮らしとは真逆なこの砂の中
走馬灯のようなその記憶が浮かんでは砂に乾かされて行く。
夕暮れ時、そして彼方に一つの宇宙船が飛来しているのを見つける。
それは旧式の一機の小さな船。
凡そ2光年は前の遺物であろう。
丁度良い、今夜はここでビバークしよう!
火をおこす。
食料は3頭目のラクダにふんだんに括り付けてある
従者などいない。俺一人。
昔からジプシー癖のあるオレにとってなんでもないこと。
手早く料理をこしらえる。
今日はカミュで乾杯。
満点の星空がより一層香りを引き立てて行く。
そういえば此処に在る過去の遺物が気にかかる
どうみても2020年辺りのオンボロ機。
半分砂に埋もれている。
いつ飛来したのであろうか。最近のことではなかろう
そもそも持ち主は何処へ行ってしまったのか
どうせ砂の藻屑に成り下がったのだろう。
遭難してしまったに違いない。
ということは後々出会うことになるのか・・・その遺骸に
それでも今頃は砂嵐に隠されているだろうな
明日はわが身・・・そんな言葉が浮かぶ。
ハッチにロックは掛かっていなかった。たやすく開く。
LEDで操縦席を照らす。ナンとも古臭い佇まい。
大分使い込んだ様子のあるシートに着座する。
そしてバッテリー残量を確認すべく電源を入れてみる。
訳なくディスプレイが点灯し、フル充電を確認。
あ、ソーラーは正常だな。
ふと、考えもしなかった衝動を憶える。
「逃避」
その二文字が心の奥底からふつふつと湧き上がる。
「エイッ!」そんなよからぬ衝動を消し去ろうとしてみる。
カミュのせいで大分酔ったかな?
だが・・・あまりに大きな衝動が捨てきれず、膨らんで行く。
気付いたときはラクダからありったけの荷物を剥ぎ取り、荷室に積み込んで行く。
もう、誰も止められない・・・
軽いクランキングでジェットは点火する。
訳も無くフワリと砂地から脱出。
割とこの世代から性能は上がっていたのだと気付かされる。
さてと・・・目的地は?
ディスプレイに残る履歴を確認して行く。
やがて初期のデータに辿りつく。
EARTH TANEGASHIMA・・・
いったいどこの星だろう。
-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-
あれからこの星に到着し、30年の月日が流れた。
知らないこの星に辿りつき、その生活様式にも直ぐに慣れた。
幼少から培った白魔術を活用し、株価操作を繰り返して富豪の座に着いた。
もうこの星での経済活動で必要なものは数少ないことに気付かされる今日この頃。
唯、与えられた時間の切なさだけが身にしみる。
一体此れまですごした日々は、果たして意味が在ったのであろうか、と・・・
金さえ出せば誰でもひざまずく容易い経済社会。
環境破壊を代償に利益を上げてゆく愚民達。
そんなことしてナンになる!
自分で自分の首を絞めていることさえ気付かずに、
愚かな貴族階級の民は目の前の角砂糖に群がっている。
それでいいのか?
目の前の温暖化、海水面の上昇、台風の強大化、ナノプラスチック水質汚濁
危うい放射線濃度、資源の乱用・・・とてつもないスピードで星を壊して行く・・・
そして人々は狂い始める。行き場を失った人々の群れ。押し寄せる難民。
貧富の差が限りなく開き続ける・・・一体何処へ向かうと言うのか?
私の星、鍵十字星もそうだった。
挙句の果てに砂漠化は進み、そして枯れていった。
人口はあるときをピークに急激に縮小し、やがて一握りの民族だけが生き残った。
民は愚楽に興じていた・・・白雉の末に・・・
この星は、未だ間に合う。
一寸の光陰軽んずべからず。
未だ君達の未来は決まっては居ない。
まだまだ夢を描き続けることが出来る。
若者達よ、そんな暗い瞳をするな。
明るい未来を切望しよう・・・
そして私は立ち上がった。
ある「ビオトープ構想」を描く。
そして近未来から繰り広げて行く・・・
私は模索する。
便利な世の中は素敵さ。私もそれを堪能している。
そして技術の果てに自然環境との高尚な域での共存の未来・・・
互いに夢のある未来を切望する。
そしてそのスピリットはEARTHに留まらず
銀河系、その先の銀河へと昇華して行く。
そう、私がその根源となり開拓してゆこう。
みなが辛いジプシーにならないように・・・
そして・・・この「鍵十字」の名の下に!
-◆-◆-◆-◆-◆-◆-FIN-◆-◆-◆-◆-◆-◆-