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前途多難?な異世界転生。

「ちょっと彼女、俺等とイイコトしよーよー。」

(どうしてこうなったのかしら?)

数人のチャラ男絡まれていた絶世の美女は、現状の経緯を思い返していた。

(えーっと確か・・・家を出て、それから考え事をしながら歩いていたらこの状況になっていた・・・うん、理解不能ね。さながら・・・)

そんな事を考えていると、

「おい、シカトこいてんじゃねぇよ!」

腕を掴まれた。が、

「イデデデデデデッ!!」

腕を掴まれたのはチャラ男の方であった。そして、腕を掴んだのは2M近くはあろう大男であった。

「・・・俺の連れに何してんだよ。」

「テツ!」

テツと呼ばれた大男はチャラ男を美女から引き離すと、チャラ男全員を睨み付けた。

「チッ、おい、行くぞ。」

美女が男連れだったこと、更に大男の発する殺気にも似た気迫を感じたチャラ男達は、この場を離れていったのだった。しかし、


バシィ!!


「イッテ!何するんだよ!」

テツと呼ばれた大男は、美女から回し蹴りを食らわされた。

「遅い!私が何分待ったと思ってるのよ!」

「遅いって、まだ約束の時間の15分前だぞ!?」

「だ・と・し・て・も!私を待たせた事にかわりはないんだから、今日は奢ってね♪」

(理不尽だろ・・・。)

テツと呼ばれた大男はそんな事を思っていた。




「でも、さっきの展開はさながら、ラノベのヒロインみたいな状況だったわねぇ。」

「ん?・・・ラノベ・・・・・って何だっけ?」

「ラ・イ・ト・ノ・ベ・ル!略してラノベ!テツにも前に説明したはずだけど?」

「あぁー・・・思い出した。ざっくり言うとマンガの小説版みたいなやつ・・・だよな?」

「・・・本当に思い出したのかしら?まぁ、その説明で大体理解出来るから許してあげるわ。でね、さっきの展開なんだけどもうちょっと流れ的に・・・、」

(コイツもこんな性格じゃなければなぁ・・・。)

テツ(仮称)はそんな事を思いながら隣の美女に目をやった。


霧島 雪華 世界でも有数の大企業『霧島財閥』の長女で、 容姿端麗、成績優秀、運動神経も良いというTHE・完璧お嬢様、なのだか、性格・・・というより趣味がちょっとザンネンだった。お嬢様系によくある『お琴を少々』ではなく、『オタクをガッツリ』が彼女の趣味であった。それ故、彼女狙いの男達は彼女の趣味を知って大抵が引く。頑張って粘ろうとにわか知識を披露すると、圧倒的なオタク情報量を返されて撃沈する。そもそも、趣味が合わない奴と付き合うつもりは無いらしい。ならば同じオタク趣味の男ならいいんじゃないか?と聞いてみたら、友人としては有りだが、恋人としては無し、らしい。さらに雪華は、パッと見厳つい俺が横にいれば面倒な男が寄ってこない事に気付き、事ある毎に呼び出されている。


「ちょっとー、聞いてるの!?」

話を聞いていないと思った雪華は、俺に顔を近づけて問い詰めた。

「聞いてるよ。ラノベの流れだったら俺が事故死して異世界で蘇ってチート?だかで暴れるんだよな?」

「・・・話は聞いてたみたいだけど、微妙にズレてるのよねぇー。」

「オタク系は詳しくないんだから許容してくれ。」

「そもそも、なんで私がこんなにオタク知識を語ってるのにテツは一向に詳しくならないのよ!」

「あぁー、なんかあんまり覚える気にならないんだよなぁ。世界観?がよく理解出来ん。」

「・・・脳筋。」

なんか小声でバカにされたようだが、とりあえずスルーしよう。

「というか、今日はいったい何処に、」

そう言いかけた矢先、


ドォン!


という轟音が聞こえたと思った瞬間、テツの意識は強烈な衝撃に打ち消された。


(・・・・・うっ、・・・ここは、どこだ?)

どうにか現状を把握しようと体を動かそうとしたが、

(体が、動かない!?)

動かせない、というよりは全く反応しない、といった感じであった。それも腕や足だけでなく、瞼すら開けられなかった。すると、

(おや、彼も意識が目覚めたか。)

そんな言葉が頭に直接響いた瞬間、先程まで全く開けられなかった瞼が反動で勢いよく開いた。そして、動かなかった腕や足も自由に動かせた。その時、

「遅い!」

聞き慣れた声が耳に届いた。目の前にいた二人の内の一人は、先程まで一緒にいた人物であった。

「雪華!」

「大声出さなくても聞こえてるわよ!」

「お前、体は大丈夫なのか?」

「体は駄目らしいわよ?」

「ん?何処か怪我でもしたのか!?」

「怪我っていうレベルの状態でもないかしら?一言で言うなら・・・部分的消滅?」

「・・・は?いやお前の体、特に問題無さそうに見えるんだが?」

「今の私達は精神体らしいわよ?」

「・・・・・・・ごめん、頭の処理が追いつかない。」

「まぁ、脳筋だもんねぇ。」

「そういう事じゃねぇよ!脳筋じゃなくても処理が追いつかねぇよ!よく冷静でいられるな!」

「ラノベじゃよくある事だしねぇ。」

「・・・オタクすげぇな。」

「彼女もそうだが、『オタクすげぇ』で納得出来る君もかなりの変わり者だと思うよ?」

その言葉に、テツはふと雪華の横にいた人物に目を移した。少なくとも、衝撃の直前に近くにいた人物でも、ましてやテツの知り合いでもない。なぜなら、顔がボヤけているのだ。まるで、顔だけが荒いモザイクにでも掛けられているようにハッキリと確認が出来ない。ただ、人っぽい顔をしているとしか言えなかった。

「・・・隣の人は?」

「神サマだって。」

人ですらなかったかー、そんな事を思うテツであった。


「では改めて自己紹介しますね。私は神サマです!」

「胡散臭ぇー。」

「・・・せめて心の中で叫んでくれませんか?意外と刺さるものがあるので。」

「メンタル弱ぇー。」

「コ・コ・ロ!」

「メンタルだけに?」

「待て雪華、武術においては心と精神は別物と考えられているんだぞ!」

「あぁー、私もマンガで読んだっけ?人体は肉体と精神と魂の三つで構成されてるって。」

「そうだ!だから心と精神が・・・・・神サマもそうなのか?」

「どうだろうね?」

そこまで話したテツと雪華はどうなの?と言わんばかりに神サマを見た。

「・・・とりあえず話を進めてもいいかな?」

本気で困惑した神はなかなか見る事が出来ないだろう。

「えー、雪華君にはもう説明したんだが、君達はもう死んでいるんだ。」

「北○の拳?」

「版権的に洒落にならないから止めようか。そうじゃなくて、君達は隕石の衝突による衝撃波に巻き込まれて死んでしまったんだよ。」

「隕石かぁ。流石に隕石は壊せないなぁ。」

「でもテツ、この前台風で飛んできた仏像を蹴り飛ばしてなかった?」

「あれは罰当たりだなぁと思ったよ。」

「でも蹴り飛ばさなければ私は死んでいたわね。」

「じゃあ許容範囲内か。」

「・・・話を進めるね?でも本来なら君達はあの隕石で死ぬ予定じゃなかったんだよ。」

「・・・は?」

それを聞いたテツの反応は、いたって普通の反応だった。

「うん、普通はそんな反応になるよね。でもさ、隣の彼女が、よくある設定でつまらんって言うんだよ?どうしろと!?って言いたくなるだろ!?」

(神にも容赦ねぇー。)

今にも泣きそうになる神サマに少し同情したテツであった。

「じゃあなんで俺達は死んだんだ?」

「手元が狂っちゃった!テヘペロ♪」

(前言撤回、コイツ殺そう。)

先程の同情は瞬時に殺意へと切り替わった。そしてそれは神サマも感じ取った。

「待って、待って!わざとじゃないんだって!だからお詫びじゃないけど、異世界で新しい人生でもどうか?って提案したんだよ。」

「・・・ん?それって・・・、」

何処かで聞いた話、そう思ったテツは雪華の方を見た。

「・・・死ぬ間際に話していた通りの流れになったのよ。」

マジかぁー、そんな感想しか出てこなかった。

「そっかー、じゃあ元の世界にはもう戻れないのか。」

「え?戻れるよ?ちょっと手続きが面倒だけど。」

まさかの返答。

「でもねぇ・・・、」

神サマがそう言った瞬間、何かを察したテツは、雪華の方を見た。

「戻らないわよ?」

目を輝かせたオタクは異世界に行く気満々であった。

「だってこんな機会まず無いわよ?それに魔法よ?モンスターよ?ファンタジーよ?行かない方がどうかしてるわよ。」

「それはそうかもしれないが・・・、」

「今以上に強くなれるわよ?」

「・・・行くか、異世界。」

脳筋チョロいなぁ、そう思った神サマであった。


「さて、俺はどうしようかなぁ。」

神サマの計らいで特別な力を異世界に持っていけるらしい。雪華は神サマにあれやこれやと脅・・・注文をしているようだ。

(でも俺、身体強化があればあといらないんだよなぁ。)

「ダメよ!魔法もほぼ全て使えるようにしておきなさい。」

心を読まれた脳筋は雪華の言う通りにした。

「あと、外見もイケメンの細マッチョにしてもらいなさい。」

「それ必要?」

「外見負けした名前が文句言える?」

「・・・・・・・・・。」

テツとは雪華が付けたアダ名である。テツの本名は 川井手 翼 である。しかし、幼い頃から鋭い目付きだった為、顔に合ってるという理由で、テツというアダ名になった。


「じゃあ二人とも、これでいいかな?」

疲労困憊気味の神サマが最終確認を行った。雪華は満足したような顔で了承した。雪華は異世界で魔法、という事で魔法に長けたエルフに転生するらしい。一方のテツも人間ではあるが、パワータイプのイケメン細マッチョに転生することを決めた。

「あ、最後にオマケとして私と念話出来る機能も付けておいたから、何か質問があるときは使ってね!」

「それはいらない。」

幼馴染のオタクは最後まで神サマに辛辣であった。

「それじゃあ、新しい世界を満喫してね!」

そう言われた瞬間、テツの意識が再び途切れた。


「・・・んっ、ここは、」

目を覚ましたテツの目に映ったのは、見たことの無い植物で出来た森であった。しかし、

「・・・ん?」

テツはある異変に気付いた。起き上がろうとした瞬間、胸に違和感があったのだ。

(・・・・・まさか、なぁ?)

そう思って、テツは胸を触った。しかしそこには、自分が知らない、非常に柔らかい感触があった。

(嘘・・・だよな?)

テツは最後の希望を込めて股間を触った。しかし、長年連れ添った相棒の姿は、無かった。

「嘘だろぉぉぉぉぉーーー!!!!!」

あまりのショックに、テツはその場で叫んでしまった。すると、

「大丈夫ですか!?」

後ろから男性の声が聞こえた。思わず振り返ったテツはそこで更なる驚愕に襲われた。そこには、自分が転生する予定の顔を持つ人物が立っていた。

「えっ?な・・・なんで?」

「もしかして・・・テツなの!?」

「へ?まさか、雪華!?」

訳が分からないまま、テツと雪華の異世界冒険が始まったのであった。

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