攻略対象②
四人目はアラン・バルティアという赤髪碧眼の公爵家嫡男であり、彼は王立騎士団と対をなす近衛騎士団に所属していた。
彼は旧家であるスフォルツァ家とは対照的な、新興貴族であるバルティア公爵家の長男だった。
アリアたちより二つ下で、自他ともに認める遊び人ではあるが、剣の技術は超一流というギャップさに萌える女性が多かった。
彼とのハッピーエンドは内部が腐りきっていたスフォルツァ家を、ヒロインとともに一網打尽にするとともに、近衛騎士団長へ出世し、武官としても貴族としても最高位に上り詰めるものだった。
トゥルーエンドは、悪事を暴かれ発狂したアリアから王太子を守れなかったとして、爵位をはく奪されるものだった。しかし、ヒロインは彼の元へけなげに通いつめ、最初はヒロインを拒否していた彼だったが、結局、ヒロインにほだされて、結婚した。
『涼音』は全ルートを攻略しきった後、この平凡な終わり方が最も気に入りのものになっていた。
そして、このゲーム中、ヒロインにとって最も悲惨なエンドと称されるのが、彼のバッドエンドである。
スフォルツァ家の陰謀に巻き込まれた彼は近衛騎士団を追放された。それに加え、王太子も追い落とされたのも相まって、ヤケになり、多くの女性を囲い始めたというものだ。
ヒロインもリリスも彼の愛人の一人として描かれていたのを覚えている。
そのため、ネット上ではこのルートをプレイした女性はこのエンドを見た後、男性不信になると注意喚起されていた。
五人目の攻略対象者は、ウィリアム・ギガンティア。
平民出身の彼は若くしてその才能が認められ、宰相補佐となった人物だ。
灰色の髪と黒い瞳をしている彼はアリアの一歳年上で、ゲームが始まる前である十六歳(ヒロイン十五歳)の時に、公開謁見で王妃に認められ、取り立てられたという逸話を持つ。
『平民』出身をよく思わない貴族たちと、日々相手しなければならなかった苦労人であるが、ゲームが進むにつれて策士となっていく姿に少し怖い、という印象を『涼音』は持っていた。
彼とのハッピーエンドはスフォルツァ家一掃の後、宰相となるもので、ヒロインとの十三年後の未来が描かれていた。
トゥーエンドはヒロインとの婚約までおこなったが、スフォルツァ家の陰謀に巻き込まれ、ウィリアムが処刑されるというエンドだった。
こちらのエンドでは、中の人自体の人気が高かったこともあって、先ほどのアランのエンディングとは違った意味で、多くのファンが嘆き悲しんだ。
ゲーム発売から数年たった後も、処刑された日としてゲーム上に出てきた日には、『命日』として『誕生日の祭壇』ならぬ『本物の祭壇』がネット上で話題となっていた。
バッドエンドは、彼の方針に反対する貴族の筆頭であるスフォルツァ家に雇われた暗殺者により殺されるというものだった。
そして最後の攻略対象者はアリアから見て三つ上の公爵子息、マクシミリアン・フェティダ。
彼は没落しかけの公爵子息で、ゲーム序盤では割合まともな環境下で育ったはずのアリアやリリスと似たような傲慢な性格をしていた。紺髪で赤い瞳の容姿、そしてその性格から死神と呼ばれた彼はゲームが進むにつれて、ヒロインとの交流により、穏やかな性格になっていった。
彼のハッピーエンドは、スフォルツァ家は没落したものの、バルティア家との争いに敗れ、最終的に中央で職を得ることができず、ヒロインとともに領地で、のんびりとした酪農を中心とする田舎暮らしが描かれた。
トゥルーエンドでは、スフォルツァ家没落の後にフェティダ公爵家を立て直して、中央で職を得た後、ヒロインは侍女として仕えるというものだった。
彼のバッドエンドはハッピーエンドに似ているが、なぜかフェティダ家もスフォルツァ家と連座して処罰されるというものだった。
これがすべての攻略対象者であり、クリスティアンとユリウス、ウィリアムのルートではアリアが、クロードとアランのルートでは妹のリリス、マクシミリアンのルートでは従妹のミスティア王女が悪役として登場する。
そろそろ3000字にするかもです。