第94話:ある捜索人のいる風景
私は川原に向かって走っていた。
暑い。汗はとめどなく流れてくる。動かし続ける足は鉛の様に重くなっている。でも足を止めず動かし続ける。
もっと速く!もっと!もっと!
私が走ってるのにはある理由から。
皆からの情報を受けた純が話をまとめた結果、川原に向かったのはやっぱりまこっちゃんだと判った。
だけどその後にこんな事を言っていた。
『…川原で二つのチームの勝負があるみたい…。』
この情報は優さんかららしい。
つまり川原に行ったまこっちゃんが巻き込まれる可能性がある。
だから私は今、走っている。
純の話では嵐、八神会長、優さん、舞ちゃん、皆も川原に向かっているらしい。
太陽は大分傾いているけどまだ容赦無く照り付けて体力を奪っている。
それでも私は足を止めない。速く!もっと速くと足を動かす。
そんな時、私の後ろから爆音が轟いてきた。
爆音はバイクだったようで私の横から前へと抜けて行く。
私は気にせず走った。バイクは私の前で止まった。
「巴ちゃん!」
バイクから私を呼ぶ声がした。
私は立ち止まり膝に両手を置きながらバイクを見る。
止まった瞬間に汗がドッと出てきてアスファルトに染みを作っていく。
「巴ちゃん!乗って!」
顔を上げる。バイクに乗っているのは……
優さんだった。前には知らない人が乗っている。
「はぁ…はぁ……、優…さん…。」
私はフラフラっとバイクに向かう。一度止まって疲れが一気に体を襲ってきた。足が重い…。
「雪!あの子乗せるからバイク貸して!」
「わかりました。先代、気を付けて。」
雪って呼ばれて人が降りて優さんがハンドルを握り2、3度エンジンをふかす。
「お借り…します…。」
私は雪さんと呼ばれた人に頭を下げる。
「あぁ。先代から話は聞いたよ。しっかりやってきな。」
白い歯を見せて笑う雪さん。なんかカッコイイ女性って感じ…。
私はバイクの後部に股がる。
「ヘルメットは…?」
「そんなのあるわけないでしょ!」
判ってました。聞いただけです。だって優さんも雪って人もヘルメットしてないし…。
「雪、終わったら返しに行くから。」
「先代。お気を付けて。」
「私にそれを言うか?白バイだって振り切れるよ。」
いや…安全運転でお願いします。
「巴ちゃん。飛ばすよ。」
「優さん。安全運転でぇぇぇ〜〜!」
私の願いは叫びになって風に消えた。
まこっちゃんの所に着く前にやられそう…
って優さん!信号赤いよ!