第90話:ある衝撃の風景2
「まこっちゃん!」
私は階段を駆け降りて閉められたドアを開ける。
開けたドアの先にはよく見る景色が広がっているだけでまこっちゃんは居なかった。
「居たか?」
後ろから聞こえた嵐の声に私は首を横に振って否定した。
私はもう一度周囲を確認した後ドアを閉めて中に入った。
中に入ると嵐が心配そうな顔で私を見ていた。
その後ろには純と八神会長、舞ちゃんがいた。三人は多分私の声を聞いて降りて来たんだと思う。
「巴、取りあえず居間に行ってみようぜ。」
「そうね…。」
私は居間に向かった。私の後ろを皆が着いてくる。
居間の扉を開けた私の目に入ったのは私を見る四対の目。そしてソファーで寝てる優さんの姿だった。
「まこっちゃんに何があったの?」
私は居間に居た人達に聞いた。返事をしたのは光おばさんだった。
「ショックな事だったんだと思うの。止めた優を振り払って出て行く位だから。」
優さんを?私は優さんを見た。丁度光おばさんがタオルを後頭部に当てた所だった。
「優さん大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ。ちょっと頭をぶつけただけだから。」
「そうですか。」
私は信じられなかった。まこっちゃんが女の人に、それも家族の優さんに手を出すと思えなかったから。
「お父さん。何があったのですか。」
八神会長が会長のお父さんに詰め寄る。私達の視線も八神会長のお父さんに集まる。
「あ、ああ。実はだな…。」
会長のお父さんは事のあらましを話してくれた。
「多分、戻れると思ってたでしょうからショックが大きかったんだと思うの。」
最後に光おばさんがそう言った。
「だから『どうでもいい』とか言ってたのか…。」
確かに嵐の言う通りまこっちゃんはそんな事を言ってた。
「純!まこっちゃんの居場所判るでしょ!」
「…無理…。」
「なんでよ!」
「…桂木さんの携帯、部屋にあった…。」
「発信機とかあるでしょ!」
「…つけて無い…。」
私は椅子を倒して立ち上がり居間のドアに向かった。
「巴!何処に行く!」
「愚問よ!」
探しに行くに決まってるでしょ!
「当てはあるのか?」
「無いわよ!でも行くわ!」
「一人より二人の方がいいぜ。」
後ろから椅子を引く音が聞こえた。後ろを向くと嵐が立っていた。
「人数が多い方が見つかりやすいでしょう。」
八神会長も立ち上がった。
「榊原さんは可能な限り情報を手に入れて伝えて下さい。」
「…判りました…。」
純はノートパソコンを開いていた。
「真を心配してるのはお前だけじゃないみたいだな。」
ヤバい。ちょっと泣きそうかも…。いえ、泣くのはせめてまこっちゃんが見つかってからね。
「光おばさん、圭おじさん。見つかったら連絡します。」
「巴ちゃん…。真を頼むよ。」
「あきらをお願いします。」
「麗、すまない。頼んだ。」
「よし、行くぞ。」
「…何かあったら連絡する…。」
私と嵐と八神会長は居間を出た。
絶対見つけるんだから!