第87話:ある全員集合の風景4
派手に散らかった居間。悲鳴とチェーンソーの唸りが響くなか父さんは叫んだ!
「真!待て!判ったぞ!」
それを聞いた俺はチェーンソーのエンジンを切った。ウウゥ…と言う音と共に刃が動きを止めた。
「何が判った?」
「薬をもらった知り合いに連絡すればいいんだ!」
「その人の名前は?」
「それは長い付き合いだから覚えてる。八神と神城だ。」
「八神?神城?」
「ああ、そうだ。」
俺は巴を見る。巴は母さんと散らかったのを片付けていた。
嵐を見る。舞に使われながら片付けをしてる。
ゆ〜ちゃんを見た。探しても居間にゆ〜ちゃんは居なかった。いつの間にか消えたみたいだ。
純を見る。純は話を聞いてたみたいで俺と目が合う。
「純。八神と神城って聞き覚えないか?」
「…うちの会長と副会長と同じ…。」
純は鞄からパソコンを取り出し起動させた。
「お前達の学校にもいるのか?まぁ、でかいから同じ名字のくらい居るか。」
なんか一人で納得している父さん。
「…名前は…?」
純が父さんに尋ねる。
「八神 透と神城 哲だ。」
純がカタカタカタとキーボードに打ち込む。
「…出た…。」
パソコンのモニターを俺に向ける。俺はそれを覗く。
「八神 透。妻、雪。長女、麗。長男、晃。…神城 哲。妻、幸。長男、護。次男、圭…。」
つまり『八神 麗』と『神城 圭』の親ってことだな…。
「…さらに詳しく…。」
純がさらに操作をすると『八神 麗』『神城 圭』のプロフィールが出る。
「『八神 麗』霞ヶ崎学園3年C組。霞ヶ崎学園生徒会、会長。『神城 圭』霞ヶ崎学園3年C組。霞ヶ崎学園生徒会、副会長。」
そこまで読んで父さんの知り合いは俺達の知り合いの親だと判った。だけど判らない事もある。
純はどういう経路でプライバシー保護のきつい時代にこんな情報が得られたのか、だ…。
「なぁ、純。」
「…秘密…。」
「純…。」
「…秘密…。」
「じゅ…。」
「…秘密…。」
「判った…。聞かないよ…。」
あきらめた俺は電話を手にすると会長の家に電話した。
少しの呼び出しの後電話が繋がる。
『はい、八神です。』
「あ、その声は会長?桂木です。」
『桂木さん…?如何なさいました?』
「家の父が会長のお父さんになんか話があるらしいんですけど…。」
『お父様に?』
「はい。あの薬の件でって…。」
『……、少々お待ち下さい。』
電話から機械の流すメロディが聞こえる。しばらくそれを聞いていたら突然途切れた。
『お電話代わりました。八神 透です。』
「あ、桂木 圭の子供の真です。今父に代わります。」
俺は受話器を父さんに渡す。
受話器を受け取った父さんは事のあらましを話出す。
「おう。…ああ。……判った。じゃあ明日な。」
父さんは受話器を俺に差し出して来た。
「俺?」
「そうだ。」
受話器を受け取る俺。
「はい、真です。」
『圭さんとの話し合いで明日神城君も連れてそちらに伺う事になりました。』
「あ、そうですか。判りました。」
『君とは一度話してみたかったしね。』
「えっ?なんでですか?」
『麗と晃が君の名前をよく口にしてたからね。気になってたんだよ。』
「そうなんですか。」
『ああ。じゃあ明日。』
電話は切れた。俺も受話器を戻した。
全ては明日だな。とりあえず…
居間を片付けようか…