第79話:ある別荘の朝の風景
魔の夜が明けた…。
俺達は朝飯を食べている。
「そういえば昨日の夜なんか騒がしかったけどどうしたんだ?」
嵐がいきなり聞いてきた。
「なにも無かったわよね。まこっちゃん。」
「………。」
トーストをちぎりながら無言で口に運ぶ俺。
「…何も無かったよね…。」
「平穏な夜でしたよね?」
巴に続いて純と会長も攻撃…いや、口撃してきた。
「…うん…。」
そう言うのが精一杯だった。昨日の夜というか今日の明け方何があったのか…。
簡単に言うなら三人に拉致されました。
拉致られて向かった先は浴場。あのあと再び入浴した訳だ。
巴、純、会長の一糸纏わぬ姿を見れたのは…まぁ…嬉しかったちゃあ嬉しかったけど…。ただ今三人を見るとその姿を思い出す訳で…。
「あれ?まことお姉ちゃんどうしたの?」
「あ、なんでもないよ。」
ってあきら君にも心配される位にボーッとしちゃうわけだ。
しかも三人は俺の事触ったりなんだかんだいじくり回してたから…正直疲れた。
「なんか真疲れてないか?」
「気にしないで…。」
再びトーストをちぎり口に運ぶ。
そもそも朝飯の用意をしたのが俺と会長ってのがまず問題だよな。
昨日の夜は会長に任せちゃったけど…
巴の料理錬金術っぷりは知ってたけど純も料理苦手だとはな…。
「そういえば今日はどうするの?また海行く?」
巴がいきなり言い出した。
「もちろん!」
「うん!」
嵐とあきら君が同時に返事をした。今日は一日あるしな…。海でもいいか…。
「この辺りは海以外ないですからね。」
「…じゃあ海で…。」
今日の行動を決める会議は一瞬の内に終了した。
『ごちそうさまでした。』
朝飯も終わりみんな出発の時間までダラダラしだした。
あきら君は宿題をやってる。偉いな…。純はパソコンを起動させてなにやらやってる。
会長も勉強してる。八神家は真面目だな…。
嵐と巴はテレビ見てるな…。
「巴。片付けを手伝う気はありません?」
「ないよ。」
即答だよ…。
「嵐…。」
「断らせてもらう。」
あの野郎…。あきら君さえ居なければ殴ってるぞ。
「やはり私も手伝いましょうか?」
会長…。昨日の夜は疑ったけど貴女はやっぱいい人です。
「あ、会長は大丈夫です。昨日の夜やって頂きましたし。」
「そうですか?」
「はい。他の女性陣ができなかったのが予想外なだけです。」
「聞き捨てならないわね。」
「…私も…。」
巴と純がゆらりと立ち上がった。
「片付け位できるわよ!」
「…馬鹿にしないで…。」
俺を押し退けて巴と純が台所に立った。
それを見て俺はソファーに座った。
「大丈夫でしょうか?」
「洗い物ですから大丈夫ですよ。」
台所を伺う会長に俺は言う。洗い物は失敗しないだろう。
パリン…。
台所からそんな音が聞こえた。
俺と会長は台所を見る。
「純。なにやってるのよ。」
「…私は一枚。巴はもう三枚目よ…。」
結局片付けは俺と会長がやることになった…