第78話:ある別荘の夜の風景4
俺は今ソファーに横になっている。何をするわけでもなくただ横になっている。別に眠くもない。ただ俺が起きてると巴が寝にくいだろうからな。
「まこっちゃん…?」
巴が俺を呼ぶ声が聞こえる。
「なんだ?」
「あ…起きてた?」
「まぁな…。」
再び沈黙に包まれる。
「ねぇ…まこっちゃん…。」
「どうした?」
「私思ったんだけど…。」
なんだか神妙な口調で喋る巴。
ギシギシッという音が聞こえた。なんの音だ?
「まこっちゃん…。」
巴の声がすぐ近くから聞こえる。俺が声のした方を見るとソファーの近くに巴が立っていた。
「巴?なにを?」
暗闇で巴の表情は見えない。でもそこに巴が立っているのは判る。
「まこっちゃん…。」
「だからなんだ?言いたい事はハッキリと言え。」
「…うん…。」
な、なんだか心臓がバクバク言ってきたぞ。
「まこっちゃん、私の見た…よね?」
うぐっ…。その話か…。
「ま、まぁ。チラッと少しちょっとは…。」
「だよね…。」
「アレは不可抗力だぞ。極力見ない様にはしたんだけど都合上しかた無かったんだよ。」
「うん…。それは判ってる。」
ヤバい…。変に喉が乾いて来た…。
「まこっちゃんだけズルくない?」
「はぁ?」
ズルい?巴は一体何を言ってんだ?
「私だけ見られたのは不公平よね?」
「…え?」
嫌な予感がするな…。
「だからまこっちゃんのも…。」
「はぁぁ?」
コイツは本当に何言ってんだ?
「まこっちゃんのも見せてよ。」
巴が近づいてくる。下がろうにもソファーに横になってたから動けない。
にじり寄ってくる巴。
「巴。落ち着け!お前は多分さっき頭を打ったんだ。冷静になれ!」
「私は冷静よ…。さあ…。」
巴が某怪盗の三代目の様に飛んで来た。しかも
「まこっちゃ〜ん。」
と叫びながらだ!避ける事も出来ずに組付かれる俺。
「待て!巴!」
脱がしにかかる巴とそれを防ぐ俺。巴の手数は凄まじく多く防ぐのがギリギリだ。
凄まじい死闘を繰り広げる俺達。会場はソファーの上。…これが悪かった。
防御に回ってた俺は後ろに体重をかけていた。攻める巴も前に前に来ていた。その結果…
ドスーン!
ソファーが倒れた。その状況下でも攻撃の手を緩めない巴。一進一退からニ進一退になる。俺が追い込まれている。
そこに神が現れた。
「…夜中に煩い…。」
「お静かにお願いします。」
会長と純が部屋にやって来た。さっきのソファーの音だろう。
「た、助けてくれ!」
二人に救いを求める。
二人は状況がつかめなかったようだか、二人ともこっちにやって来た。助かった…
「…手伝う…。」
「天城さん加勢します。」
しまった!神は神でも邪神だ!