第74話:ある祭りの終わりの風景
「……こっ……。」
ん…?なんだ?なんか声がする…。
あたりは一面真っ暗な世界だ。空も地面も暗く何も見えない。
「……こっちゃん。」
また声が聞こえた。誰だ?どこから聞こえるんだ?辺りに人影は無い。
「まこっちゃん。起きて。目を開けてよぉ。」
この声…。この呼び方は…。巴か?なんで心配そうな声で俺を呼ぶんだ?
真っ暗な世界に巴は見えない。
「まこっちゃん…。」
闇の中に一筋光がさしてきた。眩しい…。なんだ…。さっき聞こえた巴の声…。『目を開けて』?
それを認識した途端闇は払われ光に包まれた……
目を開けた俺の視界に入ってきたのは目を閉じた巴の顔。距離は近い。
「…巴…?」
「ひゃあ!」
俺が呼びかけると変な声を上げて巴は俺の顔から離れた。
「まままま、まこっちゃん。めめ、目が覚めた?」
俺はなにやら動揺している巴を置いてまず自分の状況を確認した。
視界に入るのは巴と月と星。耳に入るのはちょっと遠くの雑踏の音と巴の声。額にはなにか冷たい物。後頭部には柔らかい感触。逆に体には固い感触。
判ったのは今外で寝てるって事だけだな。
「もうちょっとだったのに…。」
「何がもうちょっとなねか知らんけど今どういう状況なんだ?」
「嵐と純はコンビニに行ってる。会長とあきら君はお手洗い。で私は膝枕してるの。」
膝枕…?柔らかい感触はそれか…。
「悪いな。どくよ。」
「悪くないよ。このままでいいよ。」
動こうとした俺を巴は止める。
「巴がいいなら…。気持ちいいしな。」
「ふぇっ!」
奇声を上げる巴。
「い、いきなり何を言ってるのよ!」
顔を真っ赤にする巴。
「ホントの事だ。気にするな。」
「気になるよ…。」
巴は俺の額に手を伸ばし濡れタオルを取る。額の冷たいのはそれか…。
「まこっちゃん…あんまり無茶しないでよ。」
巴は俺の頬に濡れタオルを当てた。ん…冷たくて気持ちいいな…。
「無茶…?」
「そうよ。疲れきった体で3人に挑むのは無茶よ。」
あ……。思い出した。だから俺今まで寝てたのか…
「あの3人はどうしたんだ?」
「たっぷり後悔して貰ったわ。私と嵐と会長の手によってね。」
嵐と巴はともかく会長もか。
「悪いな。なんか迷惑かけちまった見たいで…。」
「別に誰も迷惑だなんて思ってないわよ。日頃まこっちゃんに助けられてるからね。」
「そうか…。」
俺と巴は無口になる。耳に入るのは遠く聞こえる雑踏の音。
そんななか足音が二つ聞こえた。
「あ、純。嵐。お帰り。」
俺も視線を横にすると歩いてくる純と嵐の姿が見えた。
「よう。迷惑かけたな。」
片手を上げて二人に挨拶する。
「真に感謝されるなんて珍しいもんだ。」
「うるせえ。それは日頃のお前の行いが悪いからだ。」
嵐は俺にコンビニの袋を渡してきた。中には食い物が入っていた。
「戻ったら飯だかは食い過ぎないように食え…って聞いてないな。」
俺は袋なら食い物をだし食べていた。
「いっ…。染みる…。」
「口切ってたからな。あんまがっつくなよ。」
一方純は巴と話していた。
「…天城さん…。」
「ん?純。どうしたの?」
「…携帯って動画も録れるの知ってる…?」
「へっ?」
「…ほら…。」
「あ〜〜〜!ダメダメ!」
巴が携帯見せられて騒いでる。
何やってんだか…




