第43話:よくある駅前の風景2
「とりあえず聞いてたなら都合がいい。俺はこの子の母親を探すから今日は3人で遊んでくれ。」
俺はあきらの手を握ったまま3人にそう言った。
「嫌よ。」
「嫌だ。」
「…嫌。」
3人は同時にそう言った。聞き分けのない連中だ。
「ここまでして放って置けないだろ。悪いな。」
もう一度3人を見て言う。3人とも呆けている。なんだ?キャラに合わないって言いたいのか?
「つまり、まこっちゃんは一人でやるつもりなの?」
「……水くさい。」
「俺達も手を貸すよ。」
今度は俺が呆ける番だった。……全く暇なお人好しだな…。
「あきら君。このお姉ちゃん達もママを探してくれるって。」
あきらに目線を合わせ今起きた事を伝える。
「お姉ちゃん達、ありがと。」
巴、榊原さんに頭を下げるあきら。それに笑顔で返す巴と榊原さん。
「まこっちゃん。そのあきら君…だっけ?まこっちゃんのいつもの喋り聞いて引いてたよ。」
なにぃ!?あきらを見るとあきらは首を横に振るが……。引いてるな…。
「……ずっとさっきの感じで…。」
ぬぉぉぉぉ!
自分で言いながら寒気がしてたのをお前等にもしろと?
「…頑張ってみ…みます。」
落ち込みそうだ…。
「真。俺も居るんだからな。」
嵐がいきなり口をはさむ。あぁ、忘れていたかった。
「改めて、巴よ。頑張ろうねあきら君。」
「…純よ。」
「嵐だ。俺達がすぐに見つけてやるよ!」
3人があきらに自己紹介をする。
「んっと、巴お姉ちゃんと純お姉ちゃん。嵐兄ちゃん。ありがとうございます。」
ペコリと3人に頭を下げる。
「やがみ あきら、です。」
へぇ、あきらの苗字やがみって言うんだ。珍しい苗字だな。
おそらく俺達4人は同じ人物を思い描いただろう。我が学園の生徒会長『八神 麗』を。
「まさかね…ハハハ。」
巴、笑いが渇いてるぞ。
「なぁ、あきら。お前姉ちゃんいるか?」
嵐が俺達の聞きたい事を切り出した。
「うん。いるよ。」
………。いや、まだ判らない。違うかも知れない。
「……麗って名前?」
榊原さん!核心に迫りすぎだ!
「うん。お姉ちゃんも一緒に来たんだけど…。知ってるの?」
…………。大当たり〜。会長の弟さんでした。
「お姉ちゃん達はあきら君のお姉ちゃんと同じ学校なの。」
「そうなんだ。お姉ちゃん『せーとかいちょー』やってるんだって。なんか『けんりょく』と『びぼー』で学校を良くしてるって言ってた。」
「…………。」
美貌を自分で言いますか…。恐ろしい人だ。
「ま、まあ、知ってる人がいるなら探しやすくていいじゃない?」
巴!ナイス!
巴の一言で固まってた俺達は動ける様になった。
「そ、そうね。よし!嵐、あきら君を肩車して上げて。そうすれば向こうから見えるかも知れないから。」
「真、それは無理だ。いかなる時であれ男を乗せるのはお断りだ!」
こ、こいつ!後でしばき倒す!
…となると……。
巴と榊原さんは俺を見てる。確かに身長的にはそうなるな。
「あきら君。お姉ちゃんが肩車してあげるから上からママとお姉ちゃんを探してね。」
あきら君を肩に乗せて立ち上がる。
「わー!高ーい!」
俺の肩の上ではしゃぐあきら君。あ、あんまり暴れないで…。
「じゃあ、あきら君の今日行った所を見ながら探しましょう。」
歩き出す俺達。
あきら君。髪を引っ張らないで…