第32話:よくある体育祭は風景(宝探し編5)
ゆっくりと近付く俺と巴の顔………。
あたりには誰も居ない。2人だけの空間……。
もう俺と巴との距離は5cmもない。俺の視界いっぱいに巴の顔が見える……。いや、巴の顔しか入らない…。
「巴……。」
静かに巴の名前を呼ぶ。巴からは何も帰ってこない。まだ意識は闇の中だ。
「オジサンとオバサンが怒ってるぞ…」
巴の耳元でボソリと呟く。
「イヤ〜〜〜〜!ごめんなさい!ごめんなさい!」
ガバッと体を起こし謝りだす巴。しかも土下座で。
「ごめんなさい!ごめんなさ……、あれ……?」
散々頭を下げようやく異変に気付いたようで辺りをキョロキョロと見渡す巴。
それを見ながら腹を抱えて笑ってる俺。面白ぇ!巴の顔半泣きで呆けてんだもん!
「え?あれ?え?………あ〜〜〜〜〜!」
ようやく気付いたらしく俺を見ながら大声を上げる巴。
ふ、腹筋が痛い…。つりそう…。
「ま、まこっちゃん!何笑ってんのよ!人がいい夢見てたって言うのに!」
す、少しは落ち着いてきた。横隔膜がヒクヒクしてる気がするけど…。
「いい夢?どんな夢見てたんだよ。」
笑いすぎて出た涙を拭いながら巴に聞く俺。
「べ、別にどんな夢でもいいでしょ!」
顔を真っ赤にする巴。どうせ変な夢でも見てたんだろう。別にどんな夢を見ようと勝手だけど。
「それよりここどこ?中に入ったはずなのにどうしてまた森の中なの?」
ようやく落ち着いたらしい。辺りを見て俺に聞いてきた。
「俺が知るか。嵐とゆ〜ちゃんの姿も見えないしな。」
土木研め…。凝ったつくりしやがって。後で文句でも言ってやらないと気がすまないな
「えっ?二人共居ないの?私達しかいないわけ?」
「多分な。じゃなかったらあんなに騒いでて誰も来ないわけないからな。」
大声で散々騒いだからな。誰か居れば普通出てくるだろう。
巴は少し考えてから顔をまた赤くした。
「だったらもう少し騒いでも問題ないね。」
笑顔を俺に向ける巴。普通の男子ならコロッといく笑顔だが俺は騙されない。何故なら巴の背後に黒いオーラが見えたから……。ヤ、ヤバい……
「巴!落ち着け!今は二人で争ってる場合じゃない!」
俺だって命は惜しい。巴を説得する俺。
「だったらまこっちゃんが抵抗しなければいいのよ。」
「なにぃ〜〜〜〜!」
笑顔を絶やさず俺に言う巴。その考えは間違ってないが激しく拒否させてもらう!
「って、何を持ってんだ!」
巴の手には小さな瓶が2個づつ4個握られていた。普通の液体じゃないだろう……。色が赤、緑、紫、黒と怪しさ抜群だからな……
「さっき越谷先輩から買った『薬?』よ。」
未鑑定品に手を出すな!
巴はその4つの瓶を俺に投げた。
「え〜い!」
放物線を描き飛んでくる4つの瓶。
「そんな可愛らしく投げるなぁ!」
俺の体は爆発に包まれて