第142話:あるご挨拶の風景
『今日の朝礼はあんた絶対サボるんじゃないわよ?サボったら殺すから。または死んだ方がマシな思いするわよ?ほら、私ネイルアート好きだし。』
朝ゆ〜ちゃんはこんな事を言っていた。手には針治療で使うような針を持って笑顔でだ。
ゆ〜ちゃんの得意なネイルアートは気になる所だが両手足の爪を赤くする趣味はないから久々に朝礼というか集会に出た。
「相変わらずくだらない話しかしないんだな。」
「同感ですけど口に出さない様にお願いします。つまらなくくだらない事は本人は気付いてないのが既に手遅れなのですが…。」
麗さんの方が酷い事をサラッと言ってる気がするんだけど…。
「それにしても長すぎますね。終わらせましょう。」
そう言って麗さんが右手を上げた。その瞬間だった
バタン…
舞台で話をしていたハゲが倒れた。そしてサーっと幕が降ろされた。
まて!なんだ?なにが起きた!
「え〜、学園長は急用の為出掛けられました。」
れ、麗さん!いつの間に!さっきまで隣に居たはずなのに!
「あんなくだらない話より今日は大事な話があります。…幕を上げて下さい。」
スルスルと幕が上がって行く。舞台上で麗さんが手招きしてる。出て来いってことか。
ドナドナド〜ナ〜ド〜ナ〜♪
ズザザザザ〜〜ッ!
ぬぉぉぉぉ!デコが!デコが焼ける様に痛い!
なんで登場曲が生演奏のドナドナなんだよ!俺は売られる訳じゃねぇぞ!
「おらぁ!」
近くにあったバスケットボールを吹奏楽部に向かって投げる!
ガッシャーン!
やれやれ…ひょっとして全部麗さんの指示か?
そんなこんなで俺は舞台の真ん中らへんに来た。
「さて、舞台上に居るのは皆さんご存知の通り2年C組の桂木さんです。」
『うぉぉぉぉ!』
『きゃ〜〜〜!』
あ〜、煩い!地響き立ててんじゃねえよ!
「桂木さんは今回、交換学習と言うことで2ヶ月この学園を離れます。」
『え〜〜〜〜〜っ!』
でかいって!声でかい!窓とか震えてるからさ!
「桂木さんが行くのは宝華学園です。」
……………。
あ、静かに…
『うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
ぬぉっ!耳が!三半規管が!
『真お嬢様〜!』
『真お姉さま〜!』
ホントに煩いぞ!シャレにならないくらいの黄色い声だ。
「皆さん落ち着いて下さい。そんな桂木さんからコメントを頂きます。」
ダダダダダッ!
な、なんだ!こっちに向かって人が走ってくるぞ!
ダンダンダン!パシャパシャパシャパシャ!
マイクが1、2、3、4、5本に、カメラが……3台。ってなんの会見だよ!
「あ〜…桂木です。会長が言った通り暫くの間宝華学園に行きます。………以上。」
『ブーブーブーブー!』
「今ブーイングした野郎ども。ツラは覚えたぞ。あとで昇降口集合。逃げたら後悔させる。」
……………。
あ、静かになった。よしよし、いい事だ。
「まぁ、そういう事なんで。後は特に話す事もないんで。」
この日の放課後、昇降口には折り重なった人の山が出来た。めでたしめでたし




