第135話:赤井嵐の日常風景2
「ぬぉ〜〜〜!なんじゃこりゃ〜〜!」
我が家の洗面所から響き渡る絶叫。発信元は俺。
「お兄ちゃ〜ん。近所迷惑だよ〜。」
「そうよ。また文句言われるでしょ。」
俺がまず文句いいたいわ!な、な、なんでこんな事になってんだよ!
俺はダッシュで居間に向かう。
「こらっ!そこで普通に飯を食ってる二人!」
「な〜に?」
「何よ?」
「何じゃねぇ!これはなんなんだ!」
自分の顔を指差し二人に詰め寄る。
「別にいつもと代わりないと思うけど?」
「私もそう思うけど?嵐、生まれついての顔に文句言ったらお父さんとお母さんが悲しむわよ!」
こ、この二人は…。よし、落ち着くんだ、俺。冷静に…冷静に…冷静に…なれるかっ!
「俺の顔は黒のマジックで落書きされてるのがデフォルトじゃねぇよ!」
「「そうだっけ?」」
ハモるなぁぁぁ!
「第一額に『Jr』って!二世か?俺は肩に星をもつ超人の息子なのか?」
はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…
「言いたい事は言い終わった?」
「はい、お兄ちゃん。これで顔洗ってきなよ。」
渡されたのは洗顔用のチューブだ。
「おう、洗ってくる。」
負けてない…俺は負けてない…。
洗顔を受け取り再び洗面所に向かう俺。
手で泡立てて顔を念入りに洗うと額に書かれたマークはキレイに消えた。
「やれやれ…。」
顔を拭きながら再び居間に戻る。
「お兄ちゃん、約束通り目玉焼きもらったよ。」
「あぁ、好きにしてくれ。」
「嵐、約束してないけど目玉焼き以外もらったわよ。」
「あぁ……って、以外ってなんだよ!」
「以外は以外よ。」
「ジ、ジーザス…。」
俺の皿の上になんも乗ってねぇ…。マジかよ…。
米も味噌汁もなにもかも元から無かったかの様にされてるし…。
「これってさ…つまり俺の朝飯は…。」
「もちろん無いわよ。」
「待ってくれ!それはないだろ!」
「待てないわよ。只今絶賛消化中ですもの。」
「おかしいだろ!なんで自分のを食う前に俺のを食うんだ!ってか姉ちゃんの朝飯を俺によこせ!」
「嫌よ。これは私の分よ。それにたとえ嵐の分があっても食べられないわよ。」
姉ちゃんはチョイチョイとテレビを指差した。なんだ?テレビを見ても腹は膨らまないぞ。って…
「マズイ!いつの間にこんな時間に!?」
テレビの角に表示されている時間…それが俺が普段家を出る時間の1分前を表示している。あ、今家を出る時間になった。
「何故だ!起きてまだそんな時間はたってないはず!」
「そんなの起きるのが遅かったからに決まってるでしょ。ほら、行った行った。」
「くそ、覚えてやがれよ。晩飯は俺が奪ってやる!」
せめてもと冷蔵庫から牛乳を出し一杯飲む。
「あ、お兄ちゃん。今日は私が作るから。楽しみにしててね。」
「おう。それは楽しみだ。」
ってヤバイッ!3分オーバーだ!
ダッシュで玄関まで行き靴を履いてドアを開ける。
ちくしょう…。空腹で走るのは辛いんだぞ……