第131話:ある休み明けの風景6
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「ごめんごめん。さっきのは取り消し。また座って。」
再び教卓に戻って来たゆ〜ちゃん。新学期の初日である。当然みんなは少しでも早く帰りたい。従ってみんなからは不満が出た。その結果…
『ブーブー、ブーブー。』
大ブーイングが巻き起こっている。みんなは確実に冷静さを失っている。冷静なら絶対にこんなことはしないだろう。何故ならみんながブーイングを飛ばしてる相手が我らが担任にして俺の姉である『桂木 優』なのだから。
「みんな、静かにしてくれるかな?」
何かに耐えながらニッコリ笑っているゆ〜ちゃん。…意外だ。イキなりキレるかと思ったんだけどな。
教室内は相変わらずブーイングは収まらない。みんな命知らずだな…。
「…今から5秒以内に口を閉じて。じゃないと……大変な目にあうわよ?」
相変わらず笑顔でゆ〜ちゃんはそう言った。
「5…4…3…2…はい、みんなありがとう。」
教室内は静寂に包まれた。そりゃみんな静かになるだろう。いつのまにやら教卓が二つに割れてるんだからな。
「これから大事な話をします。面倒だけど仕事だから。」
はっきり言い過ぎだろ。もうちょいオブラートに包んでくれ。
「じゃあ入って来て。」
その声と共に扉がガラガラガラという音と共に開いた。
入って来たのはさっき屋上で見た二人だった。さっきと変わらず学ランのままだ。
ゆ〜ちゃんは二人にチョークを渡して椅子に腰掛けた。うん、やる気ないな。
チョークを渡された二人はそれぞれ黒板に文字を書き出した。
『氷室 練』
『ひむろ そー』
二人はチョークを置いて俺達の方を向いた…が、推定『練』の方がもう一人の書いた名前を消して書き直した。
『氷室 蒼』
漢字で書くとこうなるらしい。
「皆さん始めまして、氷室 練です。」
「どうも〜。氷室 蒼だよ〜。よろしく〜。」
二人ともペコリと頭を下げる。俺達からは拍手が起こる。
頭を上げた二人はキョロキョロしだした。そしてゆ〜ちゃんをチラッと見た。そのゆ〜ちゃんは読書中だ。視線に一切気付いて無い。
「皆の集!ここは転校生に質問する所だ!そうですよね。桂木先生!」
あ、馬鹿が生き返った。そんでもってなんなんだそのテンションは…。
「あ〜、勝手にやって。」
ゆ〜ちゃん…、転校生の紹介忘れてた事悪いと思って無いな…。
「その前に僕から先生に聞きたい事があるんですけど。」
唐突に口を開いたのは練…だっけ?…うん、練だな。
「私に?手短にね。」
質問された時くらいは本から目を離せよ、ゆ〜ちゃん…
「なんで誰も制服を着てないんですか?」
「うちが私服の高校だからよ。」
固まる練。ひょっとして知らなかったのか?
「……先生は制服で来なさいって…。」
「私は学生らしい服装でって言ったのよ。」
「でも『制服ですよね?』って確認したら否定しなかったじゃ無いですか。」
「確かに否定してないけど肯定もしてないわよ。『個人の判断に任せる』って言ったはずよ。」
そりゃ丸投げだろ!ひっで〜!転校生が完璧にフリーズしてるじゃねえかよ!可哀想に…