第124話:ある夏の終わりの風景4
「さて、じゃあ宿題やるぞ。」
「「は〜い。」」
「………。」
こら嵐。そんな横になってピクピクしてないでちゃんと返事しないか。
「まこっちゃん、嵐からなんか出てる。」
「暑さのあまり蒸発してんじゃないか?」
確かに口からなんかモヤモヤとでてる気がするけどな。
「兄貴、嵐さんが時折ビクビクって陸に上がった魚みたいな動きするんだけど。正直キモい。」
「何を言う、舞。嵐がキモいのは元からだろ?」
「あ、そっか。」
「そうだよ、舞ちゃん。嵐から『キモさ』と『エロ』を取ったら無くなるんだから。」
「そうそう。そう考えれば形が残ってるだけまだマシじゃないか。」
「お…お前ら…。」
ドッゴーン!
「ぬぎょぴゃっ!」
「兄貴、あんまり暴れると床抜けるよ。」
「ん、そうだな。じゃあ静かに宿題やるとするか。」
そうと決まればこの手に持ってるのを置かないとな。
ミギャァ…コトン
「ぬぁ…。」
別に止めとか考えてた訳じゃないぞ。直接置くと床が凹むからワンクッションをだな。
「あ、完全に嵐の動きが止まった。」
「あ、兄貴、ここ教えて。」
お、今日は舞なんだかやる気だな。
「ああ。いいぞ。どこだ?」
「ここなんだけど…。」
「それにしても舞ちゃんもやっぱ宿題終わって無かったんだ。」
「そう言う巴さんこそ。」
「そんなの当たり前じゃないの。休みの終わりにまこっちゃんのを写すのが毎年の方法なんだから。」
あ…、そういえば巴には言ってなかったな。
「巴。俺もまだ終わってないぞ。」
「えっ、なんで。」
その『私の宿題どうするの?』みたいな目は止めろ。
「なんでも何もさ、俺ペンが握れる様になったばっかりなんだけど。」
巴に手をヒラヒラ〜と振って見せる。
「じゃあ写せないの?」
「そういう事だな。」
「ちょっと、そんなん無理よ。絶対終わらないし。むしろ違う意味で終わったわ…。」
巴は肩をガクリと落として下を向いた。なんだ、もう見るからに『私、落ち込んでます。』って感じだ。
「ある程度は教えてやるから自力でやれ。」
「無理。」
「いやいや、本来宿題は自分でやるもんだろ。」
「ここ何年も自力でやってないし。」
「それは誰が悪いんだ?」
「もちろん、まこっちゃん。」
そうだろう…ってちょっと待てい!
「なんで俺なんだよ!」
「だって写せる人がいるんだもん。しょうがないじゃない。」
「…そんな事言うヤツには教えてやらん!」
「あ〜嘘嘘!私です!自分でやらない私が悪かったんです!だから見捨てないで!」
うむ。わかればよろしい。ってかこれくらいで泣きそうな顔するな。最近お前の涙腺緩み過ぎだぞ。
よし、話もまとまったしやるとするかな。
…それにしても嵐がお空の上から帰ってこないな…