第120話:ある二人の風景7
「…もうこっちみていいよ…。」
「泣き止んだのか?」
「別に泣いてないし…。」
「そうか?背中が濡れてる感じがするんだけど。」
「それはアレよ。局地的な雨のせい。」
「俺の背中にだけか?えらく都合のいい雨だな。」
「事実なんだもん、しょうがないでしょ。」
俺は軽く笑いながら後ろを見た。巴は普通に立っていた。ただ目が赤い。…いいや。何も言わないでおこう。
「さて、じゃあ帰るか。」
結構長い時間居たな。もう太陽が沈みそうだ。
「そうだね。そうしよっか。」
俺は家への道に向かい歩き出す。
「あっ!まこっちゃん。ちょっとストップ!」
「ん?どうした?」
「いいから動かないで。尚且つ30秒目を閉じて。」
「…なんでだ?」
「いいから。目を閉じないとチョキでえいや〜ってするよ。」
「わかったよ。閉じりゃいいんだろ。」
えいや〜ってなんだよ…ったく…。
「なにかされたら暴れてもいいのか?」
「そんな事したら大声で叫ぶよ。」
「……大人しくしてます。」
なんか後ろでゴソゴソしてる音がする。一体なんなんだ?
首筋になんか冷たいのが触れた。……いやいや、ナイフはない…よな…。
「よしっと。まこっちゃん、もういいよ。」
目を開けると前に巴が居た。何故か鏡を持ってる。
「鏡なんか持ってどうした?」
「よく見て。首の所とか。」
首?冷たいのを当てられたとこか?
ってなんかあるな。しかも見覚えがあるような…。
「これって俺が巴に上げたやつか?」
俺の首元にネックレスがあった。さっき見たヤツだ。
「おしい。私がもらったヤツじゃないわよ。ほら。」
確かに巴は俺があげたの着けてる。って…どういう事だ?
「それは私からまこっちゃんへのプレゼント。」
「お前が?俺に?」
「うん。まこっちゃんに似合いそうだったから。」
ああ、なんか似合うかもとか言ってた気がするな。
「つまり俺達二人して同じの着けてる訳だ。」
「私と一緒じゃ嫌?」
「嫌じゃないさ。巴が似合うと思って選んでくれたんだ。大事にさせてもらうよ。」
「私もまこっちゃんが選んでくれたから大事にするね。」
「おう。同じの着けるなんてカップルみたいだな。」
「えっ……。」
巴…。なんで俺から目を逸らす。なぜ下を向く。そしてそっからさらに後ろ向くのか?
「な、何言ってるのよ…。」
なんか巴の耳が赤いのが見える。
こりゃ…俺って嫌われてるのか…?なんも悪い事してないと思うんだけどな…
だけど耳まで赤くなるほど怒ってるっぽいし…
凹むなぁ…