第119話:ある二人の風景6
やっぱ買い物にけっこう時間使ったな。大分日が傾いて来てるな。
結局巴は小物屋でなんか買っただけだ。(袋の大きさからいってカエルじゃ無さそうだ)
俺達はどちらから言うでも無く家に向かって歩いてる。
途中で川を越えて家に向かう。
「ねぇ、まこっちゃん。」
「ん?どうした?」
「ちょっと河原に行かない?」
「ん、いいぜ。少し涼みたいしな。」
川の所は邪魔なものがないから風邪が通り抜けて気持ちいいしな。
俺達は土手を降りて河原に来た。
「しかしここに来るのも久しぶりだな。」
河原なんか用事が出来ない限り来ないしな。最近来る用事も無かったしな。
「そうだね…(やっぱ覚えてないんだ。)」
「ん?なんか言ったか?」
「ううん。何でも無いよ。」
「そうか?」
何でも無いようには見えないぞ。土手降りてるあたりから巴がなんか変だし。
あ、そうだ。
俺はポケットから小さな袋を巴に差し出した。
「これさっき買ったヤツ。中身知ってるからつまらんかも知れないけどプレゼント。」
実際、買った時にすぐ側にいたからな。
「あ、ありがとう。」
「なぁ、着けてみてくれないか?」
「今…?」
「ああ。実際に似合うか見てみたいからさ。」
「うん…。」
巴は袋を開けて中身を出した。中身は当然さっき買ったネックレスだ。これがマジシャンだったら中身が違うんだろうけど残念ながら俺は手品は出来ないからな。
テレビとかだと相手に着けてやるんだけど今現在俺の両手はそんな細かい作業ができる状態じゃない。
一人でまともに飯も食えないくらいだからな。
もし手が動いてもやらないだろう。なぜなら恥ずいから。
と言う訳で巴は自分で留め具を外し首の後ろで留めた。
「どう…かな?」
「やっぱ似合う。俺の目も捨てたもんじゃないな。」
「ホント?ありが…と。」
巴は突然両手で顔を覆った。
「巴…?どうした?」
「…な…んでも…ない…。」
「ホントか?」
「ホント…に。だから…後ろ…むいて…て。」
俺は巴に背中を向けた。すると背中から前に向かって巴の腕が回ってきた。
「ちょっと…待って…て。」
首筋に巴の息が当たる。少しくすぐったいけど俺はただ立ってる事にした。
巴の腕に力が込められる。
俺は巴の手に自分の手を重ねた。
背中に感じる巴。聞こえるのは巴のおしころした声と川の音だけだった。