第112話:ある退院後の風景4
「さぁ、食べて。」
「う…、ああ…。」
これは…食い物なのか?って誰か俺を助けてくれ!
「ほら、病院食ってものたりなかったでしょ?遠慮しないでいいから。」
すっごい遠慮したい。病院食でいいです。
「なぁ、これはなんて料理だ?」
「見たらわかるでしょ。ハンバーグとカレーとサラダよ。」
わかってれば聞かないんだが…。料理をじっくり見てみようか…。
まずはこの液状のものか…。これがカレーなのか?色は…黒いな…。具は、人参、じゃがいも、肉、林檎、蜜柑、えのき茸等々…。林檎って隠し味じゃ無かったか?1/4サイズででかでかと主張してやがるけど…。
次だ次!これは…なんだ?
「これはなんだ?」
「サラダよ。」
サラダァ?なぜ切って盛るだけのサラダがこんな怪しげな感じになるんだ?なんか『ダークマター』とか『核廃棄物』って言われたら納得しそうな感じだ。…これがサラダか…
そして…これはハンバーグに見えるな。
うん。ちょっといびつだけどハンバーグだ。
「さぁ、口開けて。」
スプーンでカレーがすくい俺の前に出される。
俺は渋々口をあける。覚悟を決めよう。
口の中にカレーが入れられる。
「――――ッ!」
な、なんだ!硬くて柔かい。そんでジャリジャリしつつブヨブヨする…。
ふ、吹き出してぇ…。でも目の前で見られてるし…。
俺は気合いを入れて飲みこんだ。
「ん…。ふぐぅ…。」
…一瞬上がって来やがった。体が拒否してやがる…。
これはチマチマ食ってたらヤバいな…。
「ス、スプーンとフォークをテープで…。」
俺は両手を目の前にだした。首をかしげながらも俺の言った通り手に固定されるスプーンとフォーク。
ス〜ハ〜ス〜ハ〜…
大きく深呼吸して準備を整える。…よし!
俺は猛烈な勢いで目の前のカレーらしきものを食べる。…苦酸っぱい!
なんで辛みが無い?カレーだろ?
いや、考えるな。考えたら手が止まる。俺は手を止める事なくカレーらしきものを食べた。
次はハンバーグだ!ハンバーグにフォークを刺す。
カチン!
う、嘘だろ?フォークをはじきやがった!どんだけ硬えんだよ!
「……んっ!」
フォークに力をかけなんとか刺す。切る事は出来そうに無いからそのまま口に運ぶ。
ガリッ!ボリボリボリッ
決して煎餅を食べてる訳じゃないからな。あくまでハンバーグだからな。
ボリボリボリ…ガキンッ!
クォッ!なんだこの金属的な硬さは!歯が折れるかと思った…。
適度に砕いた所で胃に押し込む。
「ん…んむ…コクン…。」
うぉ!体がなんか震えて来たぜ。ヤバいな…。頑張れ、俺!後はサラダだけだ!
俺はサラダを一気にかきいれる。
味わうな。味わずに胃に入れるんだ!
ガツガツガツ…
に、にげぇ…。駄目だ。味を感じてしまった…。なんでサラダなのに苦い…。ホントにサラダなのかすら怪しいぞ…。
「く…ん……んん…。ご、ご馳走様…。」
「もういいの?」
「あ、あぁ…。」
「じゃあ私も食べよ。」
自分の前に置いてあるスプーンを手にして一口食べた。
俺は止められなかった。何故なら胃がメルトダウンしそうだったから…。
「――ッ!ん〜ん〜!」
口を抑えてもがいている。
「ま、まこっちゃん…ゴメン。とにかくゴメン…。」
わかってくれればいいよ、巴。
俺はテーブルに突っ伏した。もぅ…無理…