第110話:ある退院後の風景2
♪ふふふ〜ん、ふふふふ〜ん♪ふ〜ふふ〜んふふ〜ふふん♪ふふふ〜ふ〜ん♪
思わず鼻歌を歌っちまうぜ。風呂入るのがこんなに嬉しいなんてな。
俺は勢いよく脱衣所の扉を開けた。
……………。
そして勢いよく脱衣所の扉を閉めた。
「なんで閉めんの?暴れん坊の歌を上機嫌で口ずさんでたのに。」
うわ!バッチリガッツリ聞かれてたよ!
「舞!なんでそこにいる?…違う、なんで待ち構えてるんだ?」
そう。扉を開けた俺が見たのは腰に手をあつて『さぁ来い!』と言わんばかりの体勢の舞だった。
「なんでって手伝いに来たのよ。」
「手伝いって風呂のか?そんなの必要ないぞ!」
「ホントに?その手で入れんの?ってか服脱げるの?」
………。
「しまった〜〜〜!」
浮かれ気分で忘れてたぜ。確かにこの手じゃ服脱げねぇし体も洗えねぇよ。
「判ったなら観念して入って来る。」
うわぁ…逃げてぇ…。
「あ、逃げたら嵐さんに変わって貰いながら榊原さんに撮影して貰うよ?」
ブ〜〜〜〜ッ!
舞!その脅迫はなんだ!そんな事されたら…。夏なのに寒気がしてきた…。
「二択か?」
「もちろん。」
っくそ!そんなの二択の名を語る一択じゃねぇか!
俺は脱衣所の扉を開ける。
「ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサーだよ!」
「いらっしゃい。」
なんでお前はそんな手を怪しく動かしながら出迎える!
「さぁ、脱ぎ脱ぎちまちょうね〜。」
ぬわぁ〜!ここ最近で最大級の屈辱だ!
「さぁ、洗うから座って。」
「はいよ。」
頭にシャワーのお湯がかけられる。
「お客さん。お湯加減どう?」
「あ〜、い〜感じだ。」
くそ〜!なんの抵抗も出来ないぞ。
ん…?抵抗?一つくらいならできるか?
舞が俺の髪をワシャワシャ洗っている所で俺は唯一考えついた抵抗を試みた。
「こんな感じかな?じゃあ兄貴、流すよ?」
「おう。」
俺はギュッとあるものを踏んだ。
「あれ?なんかシャワー弱い…。」
今だっ!俺は踏んでいたシャワーのホースから足を離す。
「わきゃ!」
シャワーは一時的に水量を増し暴れる。
「うわ…、シャワーかかった…。」
うっし!作戦は成功したようだ。
「ずぶ濡れだよ…。こうなったらいいか。」
なんだ?なんかごそごそ聞こえるぞ?なんだか確認したいけど今目を開けたら目に入るよな…。
「よし、OK。流すよ。」
「あぁ。」
シャワーのお湯を頭にかけられる。
「痒い所ないですか?」
「それは聞くの遅くないか?」
「あ、そっか。」
シャワーが止まり俺は薄く目を開けて鏡ごしに後ろを見た。
……はっ?俺は慌てて目を閉じる。
「舞!なんで脱いでんだよ!」
「しょうがないでしょ。濡れたんだから。」
いや、間違っては無いけどなんか違うだろ!
「さぁ次行くよ!」
次ってなんだ!