第107話:ある病院の風景3
「落ち着いたか?」
日陰のベンチに座った俺は巴に声を。巴は俺の横に座り俺の肩に顔を埋めている。
「うん…クスン…大分…。」
「そうか。」
俺はただ巴の頭を抱いてボーッと景色を眺めていた。まぁぶっちゃけるとどうしていいのか判らなかったんだけどな。
今まで男達を泣かして来た事はあるけど女…ってか巴に泣かれたのは随分久々な気がする。
「小学校…いや、その前か…?」
「クスン…何が…?」
巴は俺の肩から顔を上げて目尻をぬぐっている。
「お前が泣いてるの見たのだよ。」
「そう…かな…。」
多分間違いないだろう。そう考えると10年位か。
「そういえば言い忘れてたな。」
「何を…?」
巴が赤い目で俺を見てる。これで巴が化粧してようものなら黒い涙とか流れた後が残るんだけどそれは無さそうだ。
「別に改まって言う事じゃないけどよ。……おはよう…。」
「あ…、うん!」
巴はニッコリと笑った。うん、やっぱ巴は泣いてる顔より笑ってる方がいいな。
さて、巴は今の所、大丈夫そうだ。問題は…
「お〜い、10数える間に出て来いよ。10…中略…0。」
俺は立ち上がり持っていた中身入りの缶を正面の茂みに向かって投げた。
ドゴッ!
「ンガッ!」
確か手応えとともに叫びが聞こえた。
「おごごごっ…な、中身入ってるし…。」
「うわっ、でかいコブ。」
「…痛そう…。」
「というより痛いですよね、これ。」
茂みの中から四人の話声が聞こえる。四人とは誰だか言うまでも無いだろう。
「ほへ…?」
巴は真っ赤な目で茂みの方を見ていた。
「丁度よくぶつけていいやつに当たった見たいだな。」
「ま、まさか!」
巴は立ち上がり声のする茂みの方に歩いて行った。
「あ〜〜〜〜!」
「あら巴ちゃん。」
「偶然ですね。」
「偶然じゃないですよ!」
「…泣かない、泣かない…。」
「泣いてない!」
やっぱりな。巴が一人でくるはず無いだろうとは思ってたけど